著者
郭 東潤 徳川 直子 吉田 憲司 石川 敬掲 野口 正芳
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-43, 2007-03

小型超音速ロケット実験機(NEXST-1)の第2回目の飛行実験を2005年10月に豪州ウーメラ実験場において行った。飛行実験では予定していた全てのシーケンスを正常に実施し,貴重な飛行実験データを健全に取得することができた。その中で,空力データは空力設計コンセプトを検証する上で重要な計測項目のひとつである。本稿では飛行実験で得られた空力データを評価し,空力設計の妥当性について検討した結果を報告する。具体的には,飛行実験により計測された空力データをCFD解析結果と比較し,抵抗低減コンセプトを取り込んだNEXST-1の空力設計に対する妥当性を検証することができた。これは機体まわりの表面静圧分布がCFD解析と概ね一致していること,胴体や主翼まわりの表面静圧分布の分析からワープ主翼,エーリアルール胴体の設計コンセプトの妥当性が確認できたこと,さらに主翼上面の圧力分布に関して自然層流翼設計に用いた目標静圧分布と良好な一致が得られたことによる。また気流乱れの小さい飛行実験条件下で,主翼上面や前胴まわりの境界層遷移データの取得に成功し,その遷移計測結果から設計点において主翼上面の境界層遷移位置がもっとも後退していることが明らかになり,自然層流翼設計の妥当性が完全に確認された。さらにその遷移計測結果を数値予測結果と定量的に比較し,境界層遷移予測ツールの精度向上に役立つ知見も得られた。特に設計点における抵抗係数の特性は,飛行実験結果とCFD解析結果で良好な一致が示され,これにより超音速巡航時の設計点における抵抗低減コンセプトの妥当性が定量的に検証された。しかしながら,表面静圧分布や空気力特性の一部の飛行実験データにはまだCFD解析結果や風洞試験結果との不一致が見られ,現在もその原因については検討を続けている段階にある。最後に今回の飛行実験により得られた技術を適用して想定実機スケールのSST形状の設計を行い,実機スケールにおいて巡航マッハ数と設計揚力で13%の揚抗比改善効果の得られることを確認した。

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