著者
仲野 由佳理
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
no.33, pp.138-156, 2008-10-20

本論文の目的は,P女子少年院における少年と教官の「語り」を分析の対象とし,(1)教官は少年の行為をいかなる文脈において解釈し,語りのリソースとして活用するのか,(2)少年と教官によって行われる語り直しは,ナラティヴという観点からみれば,どのようなアプローチがなされているといえるのか,(3)語りで使用されるリソースやプロットはどのような枠組みのなかで変化するのか,を明らかにすることである.成績予備調整会議及び処遇審査会,個別面接指導場面(事例1と2)の観察を通して,教官が少年の「行為の意味」を「更生」との連続において「(望ましい)変容」として意味づけ,このプロセスで得られた変容に関する教官の解釈は,少年と教官の相互行為のなかで,「語りなおし」のリソースとして活用され(目的1),問題の染み込んだストーリーからの「問題」の発見や外在化を通し,少年と教官の協同作業によって,語りなおしが行われていることが指摘された(目的2).また,リソースは過去の経験から現在の経験へ,プロットは個人化へむけたプロットから社会化へむけたプロットへと変化することが明らかにされた(目的3).

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