著者
石崎 涼子
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.17-26, 2002-11-01
被引用文献数
2

現在,地方自治体には施策の策定主体としての責務が与えられ,「自治体」としての林政,住民自治を内実化させる施策形成のあり方が問われている。本稿では,近年独自性を強める自治体施策の政治・行財政過程の分析を通じて,自治体林政における施策形成の実態を明らかにした。事例として,大規模かつ積極的に独自の施策を展開してきた神奈川県において1980年代以降,議論を集めた公的管理施策とやまなみ林道整備施策をとりあげた。その結果,両施策の形成過程は,ともに林務施策が都市部,とくに自然保護の視点へと開かれていく過程であり,知事選後の総合計画策定を契機として住民からの一定の支持を受けながら,またその時期の財政状況を反映して,施策が分化・拡大した後,縮小・統合へと転じてきた点,多様な利害の調整にあたっては,利害関係者の代表者による協議・議論と自治体による調査研究とが密接不可分に関わってきた点,国との財政関係による制約の影響は比較的小さかった点,都市部と農村部の関係が質的にも施策形成過程を規定してきた点が明らかとなった。

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