- 著者
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石崎 涼子
- 出版者
- 林業経済学会
- 雑誌
- 林業経済研究 (ISSN:02851598)
- 巻号頁・発行日
- vol.50, no.1, pp.27-38, 2004-03-01
- 被引用文献数
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3
本稿では,独自の施策を展開する先駆的自治体の代表例として注目されてきた神奈川県と,「改革派」とされる知事により積極的な県政改革が進められるなかで独自の構想に基づく施策を導入した三重県を事例として取りあげ,都道府県が独自に展開する森林整備施策と森林管理の現状を明らかにすることで,施策形成主体としての都道府県の特質を検討した。その結果,両県による施策は積極的な独自性を有しているが独自の枠組を築いたがゆえに抱えた問題も生じている点,施策形成にあたっては大規模な施策の費用を負担しうる対象が強く意識されており,その対象との関係が両県の施策形成を特徴づけている点,三重県においては地域や事業体の主体的な取組を重視した地域による森林管理の仕組みが模索されている点などが明らかになった。都道府県による施策は,一方で県民間の合意や国の支援を求めながら制度設計や施策決定を行い,他方では地域や事業体等との関係のうえに森林整備や管理のあり方を模索している。都道府県による施策形成は,様々な課題を抱えつつも,両者を繋ぐ仕組みを主体的に模索するものとして注目できる。