- 著者
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林 恵子
- 出版者
- 福岡女子大学
- 雑誌
- Kasumigaoka review (ISSN:13489240)
- 巻号頁・発行日
- vol.14, pp.1-14, 2008
コールリッジが「動機なき悪意が動機探しをしている」とIagoのOthelloへの復讐に関して言及して以来、多くの批評家は彼の動機に様々な関心を示してきた。"But partly led to diet my revenge, / For that I do suspect the lusty Moor / Hath leaped into my seat" (2.1.275-77)と打ち明けるIagoの台詞は、その信憑性には疑義が付きまとうが、少なくとも彼の悪意の動機を照らし出している。IagoはOthelloと自分の妻Emiliaとの不貞を疑い、「寝取られ夫」にされたと思い込み、それが彼の復讐への動機の一因となっているのだ。「寝取られ夫」の題材は、主として、喜劇に多く見られるものである。このことからして、Othelloは悲劇ではありながらも、バーレスク的様相に彩られていることは否めない。本稿では「寝取られ夫」という喜劇的題材と、ムーア人として表象されたOthelloへの人種差別的観点から生まれるシャリヴァリ的なOthelloとDesdemonaの結婚を分析し、その結婚が大衆祝祭的な価値の転覆関係として表象されていることを考察する。