- 著者
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小野 一
- 出版者
- 工学院大学
- 雑誌
- 工学院大学共通課程研究論叢 (ISSN:09167706)
- 巻号頁・発行日
- vol.45, no.2, pp.1-15, 2008
2005年9月18日の連邦議会選挙の結果,シュレーダー率いる赤緑連立政権(社会民主党+緑の党)は7年間の幕を閉じ,メルケル政権が発足した。予想を覆す選挙結果,初の女性連邦首相の誕生など,何かと話題を呼んだ政権交代制だったが,政治学研究における重要な論点のひとつは,大連立という政権連合型の特異性である。今日,大連立とは,キリスト教民主社会同盟(CDU/CSU)と社会民主党(SPD)との連立政権を指す。保革の二大政党の連立は例外的と見なされることが多いため,中心的な研究テーマとはなりにくかった(Probst,2006 : 629)。だが州レベルではこの型の連立政権がしばしば現れており,その中には,他に現実的オプションがないという消極的な理由からではなく,積極的な意味を付与されて登場したものもある。本稿は,主要な事例を概観した上で,大連立政権に関する論点を抽出し,メルケル政権の政治的位置をドイツ政党政治の再編成という中長期的パースペクティブに重ね合わせて考察する試みである。