- 著者
-
鈴木 壮衛
- 出版者
- 駒澤大学
- 雑誌
- 駒澤大學文學部研究紀要 (ISSN:04523636)
- 巻号頁・発行日
- vol.28, pp.A90-A106, 1970-03
1.武道は,仏教そのものではなく,医療そのものでもないけれど,ただ「行」としてのgong-fuを基本として成り立っているという点で,かかる三者は明らかに一つに結びつく接点を見出される。2.かかる三者は,調身調息調心という生理心理的反映であり,その全体的な相互連関として捉えることもまた可能である。3.東洋は言うまでもなく生命智,体験智,全体智,内面智による機能主義医療,主観的あるいは直観的医療に立つ診断治療過程であり,まさにそこには人間の根源的な問題が具有されている。それに対し欧米的な診断治療過程は経験知・理論知・外面知・部分知をもって疾病を処理する点で,まさにそれを科学医療と呼ぶことができよう。そのように東洋は西洋と異なるが,その両者は相互依存の関係であり,つまり人間でたとえれば男と女との関係の存在に類似している。4.武道,仏教,医療のいずれも精神の分析そのものより,むしろ精神の統合をするところに大きな意味がある。精神統合とは診断治療を超えて人間のもつ無限なる潜在的諸能力の開発と人間的実存の根底を発見に努めることなのである。