著者
芦田 誠
出版者
拓殖大学
雑誌
拓殖大学経営経理研究 (ISSN:13490281)
巻号頁・発行日
vol.82, pp.1-27, 2008-03

現代を代表する物流の考え方は,製販を統合し情報を共有することよって在庫縮小とリードタイムの短縮を実現するSCMであり,日本政府の現行物流政策は,「東アジアSCM」,「環境・静脈物流」,「DCM」,「安心安全を支える物流」の構築が中心となっている。現代企業100社の物流改革を探ってみると,「物流の再編・物流拠点の集約」と,「SCMの推進」,「輸送・倉庫の効率向上」,「グリーン物流」,4つに取り組んでいる。06年日本における物流大賞は「ITトラックを活用したCO_2削減の数値的把握」,「包装資材のリターナブル」,「配送状況の可視化によるCS向上」であった。アメリカの物流大賞では,06年が「貨物輸送費見積モジュールの構築」,「物流システムの一元化」,「荷主とトラック会社,ドライバーとの信頼関係回復による輸送効率の向上」であり,07年が「DCの新設による輸送費の削減とリードタイムの短縮」,「荷主の輸送貨物と運送会社のトラックを連動させたConnected Capacity Portalの開発」,「中国からの輸入物流における分散型から統合型物流システムへの転換」,「GHGを50%削減させるモーダルシフトの推進」であった。日米の物流大賞とも,日本の現代企業100社が取り組んでいる既述4大改革に収束される取り組みである。実際の物流現場ではSCMだけでなく,より広い範囲の物流改革が行われている。それらを動機付けているものは,物流に関する資産を縮減する一方,顧客サービスを充実することによって売上高の増大を図っていく企業の目的と経営戦略,そのものにある。問題は,棚卸・固定資産,ならびにロジスティックスコストの削減と顧客サービスの向上が対抗軸にある点であり,現代企業の物流改革の評価は,物流コストとカスタマーサービス,二つの対抗軸を関連させてみていかなければならない。

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