- 著者
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山本 元
- 出版者
- 山脇学園短期大学
- 雑誌
- 紀要 (ISSN:03898814)
- 巻号頁・発行日
- vol.45, pp.51-71, 2007
国際関係における不確実性は,国際社会の無政府構造に起因する不可避的な現象と考えられてきた。しかし,この仮定は「自明」なのであろうか。このような大きな問題意識の下,本研究は以下の二点を明らかにする事によって,その自明性を相対化する。その一つは,国家が敢えて不確実性を作り出す(曖昧戦略を選択する,コミットメント問題を発生させる)ことが政治的に合理的となる局面が存在し,それが現在進行中の在韓米軍撤退事業にも表れていること。もう一つは,敢えて不確実性を作り出すことが,米国の帝国化の手段となりうること,(しかしながら)それが同盟国間においては「不適切な手段」であるため,その実施には同盟国の「同意」を要すること。その上で,その不適切性が無人化技術によって政治的に正当化されうる政治力学を説明する。以上の考察を通じて,米国の「帝国化」が,植民地時代のような明示的な「強制」に頼ることなく,(自覚的あるいは意図的に)不確実性を作り出すことによって,同盟国が積極的に「帝国」に協力(服従)するようになるメカニズムを指摘する。