著者
穐山 守夫
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大論叢 (ISSN:03854558)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.41-72, 2007-12

本稿は,日本の社会保障における新自由主義政策の展開の意義と問題点を検討するものである。その骨子はこうである。弱者保護等のための社会的規制の多い社会保障の分野でも,既得権益を追求する集団の意向を受けた政府支出の安易な拡大と財政赤字の慢性化や官僚機構の肥大化により政府の失敗が目立つようになり,また予想を上回る少子高齢化社会の進展により社会保障財政の逼迫等が生じており,その改革が要請される。そこで個人の自立や営利企業の効率性を重視する新自由主政策を推進する必要があるが,本来,自発的協力の原理が機能した分野を社会化した社会保障の分野は,経済システムの効率原理である市場原理が他の分野より機能しないから,市場の失敗がより多く生じる。これらの失敗を是正するためには,強制力を有する政治システムによる公正を目指す公的活動だけでなく,消費者指向の効率的企業活動を補完する家族・近隣の人・ボランティアや組織された福祉活動を行うNPO・社会的企業等の第三の主体の人間味の強い福祉的活動も必要である。

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