- 著者
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中尾 彰
- 出版者
- 近畿大学
- 雑誌
- 近畿大学医学雑誌 (ISSN:03858367)
- 巻号頁・発行日
- vol.32, no.2, pp.89-101, 2007-06
糖尿病患者に網膜光凝固術を施行すると,光ストレスからの回復が遅く,日常生活において明順応状態にある可能性が考えられた.検眼鏡的に網膜症をみとめなくても網膜機能障害を示すか調べるために,暗順応検査,秤体系網膜電図(scotopic electroretinogram,scotopic ERG),錐体系ERGとしてphotopic ERG,長時間光刺激photopic ERGを施行した.暗順応検査では,網膜症をみとめなくても光覚閾値が上昇していた症例があった.明順応20分後のphotopic ERG b波振幅と暗順応30分後の光覚閾値は,網膜症が進行すると相関は強くなる傾向があった.長時間光刺激photopic ERG d波は,網膜症が進行すると明順応開始直後から振幅がみとめられた.暗順応においては自覚的,他覚的に順応の遅れが糖尿病患者においてみとめられた.また,明順応においては,他覚的にそれに対するERGの変化が障害されていることが証明された.糖尿病患者では,網膜に光強度の変化に対する順応に問題があり,ダイナミックレンジが狭くなっていることを示唆しており,網膜症をみとめない糖尿病早期の診断に有用であると考えられた.