著者
阿部 征次
出版者
東京女子体育大学・東京女子体育短期大学
雑誌
東京女子体育大学紀要 (ISSN:03898806)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.104-112, 1985-03

陸上競技のトレーニングの性差をどのようにとらえているかを知るために,高校指導者に質問紙により調査し,因子分析をし次のような結果を得た。1)練習意欲・研究心に男子はすぐれ,他の選手や本で研究し,テレビ,ラジオなどで関心をもち,自分で計画を立て実践すると見られている。2)練習や試合でコーチに依存する傾向は,女子の方に強く,男子に自主性があるとされている。3)女子の練習は質より量であり,練習を多く行い休養はそれほど必要ないと思われている。4)男子は強い選手への指向があるのに対し,女子はウェアや異性への関心が高く気分によって練習態度が変わることが多いとみなされている。これらのことは,女子が効果的に陸上競技のトレーニングを行っていくことの難しさを示しているように思われる。高校の指導者からよく耳にする「女子の指導は難しい」あるいは「面倒で手がかかる」という声を,そのまま表わしているように感じる。このような結果を,筆者の立場(女子を対象とする指導者)からみると,次のような見方をすることができる。女子競技者には,練習意欲をもたせるために,常に身近な目標をもたせ,練習課題を明確に示して研究するように指導する。練習計画の立案やその遂行に絶えずアドバイスを与えて,練習の進行,試合での力の発揮に精神的援助を与える。男子より多めの練習をくり返し行うようにし,練習に集中しにくい条件を取り除いてやる。このような配慮をすることによって女子の指導の効果を男子以上にあげることも可能であろう。今回の調査票の質問項目間の相関行列から,項目数を整理し5段階尺度を女子の特性をより明確にするよう工夫し,今後研究を続け,女子のトレーニングの効果をあげるための指導上の留意点を明らかにしていきたい。

言及状況

Twitter (2 users, 2 posts, 0 favorites)

こんな論文どうですか? 陸上競技トレーニングの性差のとらえ方(阿部 征次),1985 https://t.co/b0IhYC8TOa 陸上競技のトレーニングの性差をどのようにとらえているかを知る…

収集済み URL リスト