著者
西原 幹子
出版者
沖縄国際大学
雑誌
沖縄国際大学外国語研究 (ISSN:1343070X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.F1-160, 2008-03

シェイクスピアのAs You Like It(以下AYLI)における「アーデンの森」は、暴君フレデリック公爵の宮廷から追放された人々が、自由を求めてたどり着く場所である。この森の場面を経由するあいだに当初の問題は解決され、終幕では再び、彼らの宮廷への帰還が果たされる。こうした宮廷-森-宮廷といった基本構造は、シェイクスピアの喜劇ではAYLIのほかにもA Midsummer Night's Dream,Winter's Tale,Tempestなどにも見られるおなじみの構造であるが、自然の風景や羊飼いの生活が描かれる森の場面は、権謀術数のうごめく宮廷の場面とは対極を成していることから、宮廷社会または都会生活にたいする批判的視点を潜在させていると解釈されてきた。田園生活を理想的に描くという手法は、ギリシアのテオクリトスやローマのウェルギリウスにまで遡る、いわゆるパストラルの伝統に属するものである。田園生活を描くとはいっても、それは現実の農村社会の風景を直接反映させたものではなく、パストラル様式に特有の約束事に従った虚構性の高いものである。また、パストラル文学が特にルネッサンスにおいて再生し繁栄したことを考え合わせると、田園風景を描いた場面には、それまでに蓄積されてきた意味が多層的に作用していたと考えられる。したがって、シェイクスピアの「アーデンの森」を読み解くには、まずその文化的・社会的コンテクストを視野に入れる必要があるだろう。では、田園風景の描写には、どのような意味が込められていたのだろうか。観客はそこに、どのようなメッセージを読み取ったのだろうか。そこで本稿では、「アーデンの森」が受容された当時の文化的状況の一端を把握することを目的とする。ただし、エリザベス朝という時代においては特に、パストラルは様々なジャンルに遍在しているため、その共通項を見つけ出し、定義づけを行うことは困難である。そこで本稿では、AYLIの「アーデンの森」に焦点を絞り、そこに現れるパストラル的要素について、いくつかの説を取り上げながら考察していくことにする。

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こんな論文どうですか? エリザベス朝パストラリズムの諸相 : As You Like Itにおける「アーデンの森」をめぐって(西原 幹子),2008 https://t.co/15zDz9RJqg
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