- 著者
-
新田 和宏
- 出版者
- 近畿大学
- 雑誌
- 近畿大学生物理工学部紀要 = Memoirs of the School of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University (ISSN:13427202)
- 巻号頁・発行日
- vol.21, pp.33-46, 2008-03
政治の世界において、政治の言葉というもののしめる重みが増している。政権担当者や政治指導者から発せられる政治の言葉が大きい意味をもつようになった。とりわけ、5年5ヶ月に及んだ小泉政権と連動するかたちで顕在化した「新しい政治(new politics)」の一つの側面として、「ワンフレーズ・ポリティクス」とも言われる、政治的フレーズを駆使するアイディアの政治の重要性を指摘することができる。本稿は、そのような「新しい政治」としてのアイディアの政治について着目し、その省察を試みる。これまで、政治学は、「政治は何によって決定されるのか?」という問いにこだわってきた。政治的フレーズを用いるアイディアの政治について検討することは、こうした政治学の問いに対して、一定程度の返答を提示することにもなるであろう。本稿は、アイディアの政治に関連する諸概念の定義を踏まえ、小泉政治が問題提起したというべき、「不利益政治」とアイディアの政治、テレポリティクスと「劇場型政治」、インターネット・ポリティクスと「新しい右翼」、並びにアイディアの政治の政治的学習、というアイディアの政治に関する諸論点について検討を行う。こうして、本稿は、政治的フレーズを駆使するアイディアの政治が、一体、どこまで政治を決定することができるか、この点についても確定したいと思う。