著者
新田 和宏
出版者
近畿大学
雑誌
Memoirs of the School of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University = 近畿大学生物理工学部紀要 (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.67-80, 2007-03-31

本稿は、日本のNGO・NPOの弱点と指摘され続けられてきたアカウンタビリティ(説明行為)とアドボカシー(政策提言)について取り上げる。アカウンタビリティとアドボカシーは、ともに外部マネジメントの範疇に入る表出行為(extension act)にあたる。また、アカウンタビリティにおける説明様式(explanation style)とアドボカシーにおける提言様式(proposal style)は、意外にも、極めて近似しており、その思考方法は通底し合っているといえる。そうすると、アカウンタビリティとアドボカシーの両者がNGO・NPOにおいて弱いのは、これは単なる偶然ではなく、必然の所産ともいえる。思うに、NGO・NPOのアカウンタビリティおよびアドボカシーの強化は、「市民社会の強化」の要諦といえるだろう。それ故に、NGO・NPOにとって、弱いと認識されているアカウンタビリティやアドボカシーを強化することは、「市民社会の強化」という点において、極めて重要な課題なのである。しかもまた、アカウンタビリティやアドボカシーは、NGO・NPOから外部へ向けて、戦略的に表出されなければ、所期の成果を期待することはできない。決して、アカウンタビリティはその説明責任を受動的に果たすものでもないし、アドボカシーは「言いたいことを言う」というような類のレベルのものではない。本稿は、NGO・NPOがアカウンタビリティおよびアドボカシーを行うにあたり、必要とされるべき戦略的な表出方法を、アカウンタビリティにおける説明様式およびアドボカシーにおける提言様式として確定するとともに、改めて、何故にNGO・NPOのアカウンタビリティやアドボカシーの強化が「市民社会の強化」に連動するのか、この重要な論点についても併せて考察することを目的とする。
著者
新田 和宏
出版者
近畿大学
雑誌
Memoirs of the School of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University = 近畿大学生物理工学部紀要 (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.51-62, 2006-03-31
被引用文献数
1

本稿は、日本における熟議民主主義の実践的な展開を、「市民会議」もしくは「市民委員会」での「ワークショップという熟議民主主義」として捉える。日本では、参加民主主義を実質的かつ制度的に保障すべき「参加の制度設計」を模索する中から、基礎自治体レベルにおいて、市民が政策形成過程に参加する「市民会議」・「市民委員会」方式が試みられてきた。その「市民会議」の内実を冷静に観察すると、そこでは「ワークショップという熟議民主主義」と呼ぶべき「日本型熟議民主主義」が展開されている。そして、本稿では、「ワークショップという熟議民主主義」を設定すべき要件とは何か、またそれを促進する要件とは何か、という問題意識に基づきながら、それらの基本要件を考察する。そのような考察から、「ワークショップという熟議民主主義」を担うファシリテーターという新しいタイプの政治的サブ・リーダーに注目する。さらに、何故に、日本では、熟議民主主義が「ワークショップという熟議民主主義」として展開してきたのか、その理由を「新しい政治文化」の出現に探る。
著者
新田 和宏
出版者
近畿大学生物理工学部
雑誌
Memoirs of the Faculty of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
no.28, pp.73-93, 2011-09

[Abstract] It may be said that The Tohoku Earthquake and accident of Fukushima Dai-ichi nuclear power plant disclose New Politics. With both the disasters, I can confirm the politics around post-nuclear power plant in Japan. And, I can understand that this politics develop the political issue of reconstruction of the governance corresponding to the nuclear plant accident, the dismantling of the regime for nuclear power plant, and the revival as the sustainable welfare society of the stricken area. And also, I can expect sustainable politics as New Politics in stricken area.
著者
新田 和宏
出版者
近畿大学生物理工学部
雑誌
Memoirs of the Faculty of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
no.29, pp.17-31, 2012-03

[概略] 本稿は、東日本大震災の経験を踏まえ、被災地や日本社会全体を、持続可能な社会として再生するための教育的アプローチであるESD (持続可能な開発のための教育)に着目しつつ、そのESD自身が、震災を契機にして、熟議による市民性教育をべースにしたESDとして再生する必要性について論究する。 [Abstract] This article discusses ESD, while according to the experience of the Tohoku Earth quake. I propose ESD, as new version, that based on citizenship education, and related the deliberative democracy. New ESD, so to speak, is the educational approach to revive and renew as sustainable society not only the stricken area but also Japanese society intotally.
著者
新田 和宏
出版者
近畿大学
雑誌
Memoirs of the School of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University = 近畿大学生物理工学部紀要 (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.37-54, 2007-09

冷戦終結以降、世紀を跨ぎ、急速に進展しつつあるグローバリゼーションに適応するために選択された新自由主義という政治的アイデアに基づく一連の改革は、日本国内において、従来の政策やレジームからの転換、とりわけポスト「日本型福祉国家」およびポスト「公共事業社会」を政治課題に据えながら、「新しい政治」の展開を導き出した。また、「新しい政治」の展開により、新たな政治的クリーヴッジが引き起こされた。本稿は、小泉構造改革を通じて導き出された「新しい政治」の展開と、その展開により引き起こされた新たな政治的クリーヴィジが指し示す方向性を明らかにし、改めて、ポスト「日本型福祉国家」/ポスト「公共事業社会」の行方について省察することを目的とする。
著者
新田 和宏
出版者
近畿大学生物理工学部
雑誌
近畿大学生物理工学部紀要 (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.47-69, 2014-09

[要旨] わが国の「政治改革」は, 一方において政権交代による民主党政権の誕生と「政治主導」の失敗, 他方においてその民主党から政権を奪い返した自民党第2次安倍政権の「政治的リーダーシップ」による集団的自衛権行使容認, という政治状況を招来した. 冷戦が終結した1989年は, 日本の「政治改革」がスタートした年でもあった. 爾来, 約四半世紀にわたり, 新しい政治の世界において取り組んできた「政治改革」は、「例外状態」を帰結するに至った。「異常事態」を予期させながら、「普通状態」を「例外状態化」しつつある政治過程は, 今後, 「新権威主義レジーム」を生成する可能性を胚胎しているのか. 本稿はこうした現代日本政治を省察する. [Abstract] "Political reform" of Japan have brought about the politics situation; in the one side, the birth of the Democratic Party government by the change of government and "political leadership" failed, in the other side, the right to collective self-defense use acceptance by "political leadership" of the second ABE government of Liberal Democratic Party which accomplished the government re-change from the Democratic Party. "The political reform" of Japan started when cold war terminated 1989. Thereafter "political reform" in the world of new politics came to the conclusion of "exception situation" for a quarter century. While ABE government creates "abnormality situation", and also while it replace from "exception situation" with "normal situation", we will encounter a possibility of the transformation to "new authoritarian regime" in future. This paper discusses such a modern politics process in Japan.
著者
新田 和宏
出版者
近畿大学生物理工学部
雑誌
Memoirs of the Faculty of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University = 近畿大学 生物理工学部 紀要 (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
no.26, pp.93-116, 2010-09-01

2009年8月30日の衆議院議員選挙の結果、政権交代が起こり、翌9月16日、民主党と社会民主党および国民新党の3党連立からなる鳩山由紀夫政権が成立した。その鳩山首相は「新しい政治」を提唱した。しかし、鳩山政権は、普天間基地移設問題で立ち往生し、わずか8ヶ月余りの短命に終わった。但し、鳩山が提唱した「新しい政治」は、その後継である菅直人政権に継承された。本稿では、政権交代により民主党政権から提起された「新しい政治」の政治的意義について、冷戦以降の20年間におけるく新しい政治〉およびその第2局面という文脈の中で捉え返しながら、政治学による学理的省察を行うものである。 (英文) As a result of Japanese Parliament of Representatives election of August 30, 2009, made the change of government. September 16, HATOYAMA Yukio government was formed a cabinet as the three-party coalition government consisting of the Democratic Party, the Social Democratic Party and the People's New Party. The Prime Minister HATOYAMA advocated "new politics". However, HATOYAMA government came to a deadlock by the issue of Futenma military base in Okinawa, and collapsed in only more than 8 months. But, KAN Naoto new government succeeded to "new politics" that advocated by HATOYAMA government. Then, the purpose of this study is to analyze the political signification of "new politics" advocated the Democratic Party government, HATOYAMA and KAN, in the context of the New Politics of twenty years after the cold war, and the second situation of New Politics.
著者
新田 和宏
出版者
近畿大学生物理工学部
雑誌
Memoirs of the Faculty of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
no.26, pp.93-116, 2010-09

2009年8月30日の衆議院議員選挙の結果、政権交代が起こり、翌9月16日、民主党と社会民主党および国民新党の3党連立からなる鳩山由紀夫政権が成立した。その鳩山首相は「新しい政治」を提唱した。しかし、鳩山政権は、普天間基地移設問題で立ち往生し、わずか8ヶ月余りの短命に終わった。但し、鳩山が提唱した「新しい政治」は、その後継である菅直人政権に継承された。本稿では、政権交代により民主党政権から提起された「新しい政治」の政治的意義について、冷戦以降の20年間におけるく新しい政治〉およびその第2局面という文脈の中で捉え返しながら、政治学による学理的省察を行うものである。 (英文) As a result of Japanese Parliament of Representatives election of August 30, 2009, made the change of government. September 16, HATOYAMA Yukio government was formed a cabinet as the three-party coalition government consisting of the Democratic Party, the Social Democratic Party and the People's New Party. The Prime Minister HATOYAMA advocated "new politics". However, HATOYAMA government came to a deadlock by the issue of Futenma military base in Okinawa, and collapsed in only more than 8 months. But, KAN Naoto new government succeeded to "new politics" that advocated by HATOYAMA government. Then, the purpose of this study is to analyze the political signification of "new politics" advocated the Democratic Party government, HATOYAMA and KAN, in the context of the New Politics of twenty years after the cold war, and the second situation of New Politics.
著者
新田 和宏
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学生物理工学部紀要 = Memoirs of the School of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.33-46, 2008-03

政治の世界において、政治の言葉というもののしめる重みが増している。政権担当者や政治指導者から発せられる政治の言葉が大きい意味をもつようになった。とりわけ、5年5ヶ月に及んだ小泉政権と連動するかたちで顕在化した「新しい政治(new politics)」の一つの側面として、「ワンフレーズ・ポリティクス」とも言われる、政治的フレーズを駆使するアイディアの政治の重要性を指摘することができる。本稿は、そのような「新しい政治」としてのアイディアの政治について着目し、その省察を試みる。これまで、政治学は、「政治は何によって決定されるのか?」という問いにこだわってきた。政治的フレーズを用いるアイディアの政治について検討することは、こうした政治学の問いに対して、一定程度の返答を提示することにもなるであろう。本稿は、アイディアの政治に関連する諸概念の定義を踏まえ、小泉政治が問題提起したというべき、「不利益政治」とアイディアの政治、テレポリティクスと「劇場型政治」、インターネット・ポリティクスと「新しい右翼」、並びにアイディアの政治の政治的学習、というアイディアの政治に関する諸論点について検討を行う。こうして、本稿は、政治的フレーズを駆使するアイディアの政治が、一体、どこまで政治を決定することができるか、この点についても確定したいと思う。