- 著者
-
野平 慎二
- 出版者
- 一般社団法人日本教育学会
- 雑誌
- 教育学研究 (ISSN:03873161)
- 巻号頁・発行日
- vol.75, no.4, pp.356-367, 2008-12
1990年代半ば以降、教職の脱専門職化を促進する教員政策が次々と打ち出されている。国民の高学歴化、消費者化とも相俟って、教師の社会的地位は相対的に低下し、教師の仕事は多様化、教職の専門性の基礎は不明確化している。ひるがえって、教職の専門性研究の主題は、地位や制度への問いから、専門的実践の内実への問いへと移行してきた。その背景には、専門性の制度的保障が権威主義に転化することへの疑義がある。本論では、学校教育の公共性が変質しつつある現状を踏まえ、学校教育の公共性の整理とそこでの教職の性格づけの検討をとおして、あらためて教職の専門性の基礎を問い直す。結論として、対話を基礎とした非権威主義的な教職の専門性の概念を提示する。それは、国家と社会からの教育要求に対して一定の自律性をもち、当事者のニーズを対話的に媒介することで、子どもの学習権を保障するものである。