著者
梅澤 嘉一郎
出版者
川村学園女子大学
雑誌
川村学園女子大学研究紀要 (ISSN:09186050)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.129-147, 2008

平成10年度入学者より,小学校並びに中学校の教諭の普通免許状授与する者に特別支援学校2日間,社会福祉施設5日間の計7日間の介護等体験が義務づけられた。本研究では,平成18年度の体験結果を事前及び事後に体験学生からのアンケート及び体験実施報告書から体験実施にともなう問題点を明らかにし,今後の事前指導にいかしていくことを目的とする。体験前の不安感等については,「体験意欲感」,「知的興味感」,「利用者との関り不安感」,「生活常識不安感」は他大学とほぼ同じ結果であったが,「体験混乱不安感」は他大学より9.4ポイント低く,逆に「失敗不安感」は,14.2ポイント高いことが明らかにされた。この改善策として,体験開始日がオリエンテーション実施の体験先につき,事前に見学やボランティア等の事前体験が他大学に比較して必要と思われる。次に事後の達成感では,「体験全体」では,達成感は85%であり,「ある程度えられている」。達成項目別では,「介護業務」,「自己覚知」は共に92.5%であったが,続いて「利用者理解」が90%,「福祉理解」が87.5% ,「職員理解」や「体験支援」は82.5%となっており,主たる体験目標としての「介護業務,」「自己覚知」は,かなり達成されている。施設種別では,障害者施設が85% ,老人施設が82.5%で達成感が高かった。但し,介護業務で,達成感が低い順に知的障害者更生施設62.5%,宅老所75%で低い。個々の達成項目では,「福祉理解」,「自己覚知」,「利用者理解」では同じ達成感であったが,「職員理解」,「体験支援」では,障害者施設の方が高齢者施設より20ポイント達成感が低いことが明らかにされた。「利用者理解」では,宅老所が81.3%で一番低く,続いて,身体障害者小規模通所授産施設,知的障害者通所更生施設が共に82.5%で低い。以上の調査結果並びに学生からの介護等体験実施報告書を加味して検討した結果,達成感が低い施設は,重度の障害のある利用者が多いが,職員の手が薄いために介護に追われ,体験学生に対する指導への時間の捻出が難しいこと,高齢者の施設では認知症の高齢者への手がかかり,学生も対応が難しいこと等が原因と考察される。(表10参照)以上から,障害者施設では,重度の障害者への対応,高齢者施設の内,宅老所,老人デイサービスセンターでは認知症高齢者の割合が高いことから,事前見学を含めた事前指導が必要である。また,老人デイサービスセンターの体験施設全体に占める割合が46%と高く,認知症対策に偏重傾向になりがちであったが,今後は,重度障害者への対応についても十分に事前指導していくことが必要であることが明らかにされた。(表2,図3参照)

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