著者
梅澤 嘉一郎
出版者
川村学園女子大学
雑誌
川村学園女子大学研究紀要 (ISSN:09186050)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.97-117, 2001-03-15

大学生のホームレス観について, 講義の際に日本やアメリカのホームレスの実情をVTR等をまじえて事情を紹介し, 講義の前と後の変化の状況を共学大学生並びに女子大学学生につきアンケート方式で実施し, 共学大学生と女子大学生, あるいは共学大学における女子大学生と女子大学生との間にどのような相違があるか検討をおこなった。検討をおこなった結果, ホームレスを「野宿者だけに限定せず, 住宅困窮者等も含めて捉える」学生が共学大学, 女子大学ともに共通して過半数を超えている。ホームレスの原因につき「個人責任だけでなく社会経済的要因もある」こと, 従って, 「行政の対策が必要」との見方については, 共学大学の男子大学生, 共学大学の女子大学生, 女子大学学生の順に高い割合を占めた。また, 変化の内容を意識的項目と客観的項目とで比較すると, 意識的事項につては, 共学大学の男子大学生, 共学大学の女子大学生, 女子大学学生の順に高い割合を占め, 一方, 客観的事項は, 共学大学の女子大学生, 女子大学学生ともに同じであったが, 男子学生は女子学生より約3倍変化し男女差が顕著に認められた。総じて, この調査結果から, 共学大学女子学生より, 女子大学学生の方が, 2倍程度ホームレス観の変化が顕著であった。ホームレス問題解決の鍵は住民の合意形成といわれる。本検証結果から今後のホームレス問題解決に向けての展望が開かれることを期待したい。
著者
梅澤 嘉一郎
出版者
川村学園女子大学
雑誌
川村学園女子大学研究紀要 (ISSN:09186050)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.85-123, 2002

わが国の少子超高齢化が急速に進む中で, その実情を紹介する講義の際に, VTR等をまじえて理解を深めるとともに最近の共学大学生並びに女子大学学生につき少子超高齢化社会観について, 特に今回は, 少子化に焦点をあてアンケート方式で実施し, 共学大学生と女子大学生, あるいは共学大学における女子大学生と女子大学生との間にどのような相違があるかについて検討をおこなった。検討をおこなった結果, 少子化の進展にたいしては, 共学大学, 女子大学ともに共通して深刻に受け止めている。少子化に関わる, 原因, 影響及び対策について, 共学大学と女子大学, 共学大学女子大生と女子大学生とにおいて, その見方についての差が明らかにされた。すなわち, 原因では, 共学大学が子どもの養育費・教育費に重点をおいているのに対して女子大学生は, 女性の職場進出を養育費・教育費より重要視している。影響については, 共学大学は社会の活力低下や税負担への影響を重視しているのに対して子どもへの影響を重視している。また対策については, 共学大学が子育て環境の整備を一番に挙げているのに対して, 女子大生は子育てと仕事の両立を一番にとり挙げている。この調査結果から, アンケート項目を, 個人選択事項(意識, 生活スタイル)と経済的・社会的環境整備事項とに分類し, 考察した結果, 女子大学生と共学大学女子大生との間で顕著な差が認められた。すなわち, 女子大生は, より個人選択事項を重視し, 例えば, 少子化の原因についても「女性の職場進出」や「高学歴化」を重視している。これに対し, 共学女子学生は, 「女性の職場進出」や「高学歴化」よりも経済的・社会的環境整備事項とに分類される「養育費・教育費の負担」を重視している。以上, 共学大学では, 子育ての社会的環境面の充実面からの解決を重視しているのに対し女子大学生は, 個々人の自由に委ねられる意識や生活スタイルの選択をより重視する立場が顕著にみられ, 両者に重点の差が認められた。本調査から, 少子化問題は, 女性の多様化した価値観に呼応した対応の重要性も明らかとなった。
著者
梅澤 嘉一郎
出版者
川村学園女子大学
雑誌
川村学園女子大学研究紀要 (ISSN:09186050)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.129-147, 2008

平成10年度入学者より,小学校並びに中学校の教諭の普通免許状授与する者に特別支援学校2日間,社会福祉施設5日間の計7日間の介護等体験が義務づけられた。本研究では,平成18年度の体験結果を事前及び事後に体験学生からのアンケート及び体験実施報告書から体験実施にともなう問題点を明らかにし,今後の事前指導にいかしていくことを目的とする。体験前の不安感等については,「体験意欲感」,「知的興味感」,「利用者との関り不安感」,「生活常識不安感」は他大学とほぼ同じ結果であったが,「体験混乱不安感」は他大学より9.4ポイント低く,逆に「失敗不安感」は,14.2ポイント高いことが明らかにされた。この改善策として,体験開始日がオリエンテーション実施の体験先につき,事前に見学やボランティア等の事前体験が他大学に比較して必要と思われる。次に事後の達成感では,「体験全体」では,達成感は85%であり,「ある程度えられている」。達成項目別では,「介護業務」,「自己覚知」は共に92.5%であったが,続いて「利用者理解」が90%,「福祉理解」が87.5% ,「職員理解」や「体験支援」は82.5%となっており,主たる体験目標としての「介護業務,」「自己覚知」は,かなり達成されている。施設種別では,障害者施設が85% ,老人施設が82.5%で達成感が高かった。但し,介護業務で,達成感が低い順に知的障害者更生施設62.5%,宅老所75%で低い。個々の達成項目では,「福祉理解」,「自己覚知」,「利用者理解」では同じ達成感であったが,「職員理解」,「体験支援」では,障害者施設の方が高齢者施設より20ポイント達成感が低いことが明らかにされた。「利用者理解」では,宅老所が81.3%で一番低く,続いて,身体障害者小規模通所授産施設,知的障害者通所更生施設が共に82.5%で低い。以上の調査結果並びに学生からの介護等体験実施報告書を加味して検討した結果,達成感が低い施設は,重度の障害のある利用者が多いが,職員の手が薄いために介護に追われ,体験学生に対する指導への時間の捻出が難しいこと,高齢者の施設では認知症の高齢者への手がかかり,学生も対応が難しいこと等が原因と考察される。(表10参照)以上から,障害者施設では,重度の障害者への対応,高齢者施設の内,宅老所,老人デイサービスセンターでは認知症高齢者の割合が高いことから,事前見学を含めた事前指導が必要である。また,老人デイサービスセンターの体験施設全体に占める割合が46%と高く,認知症対策に偏重傾向になりがちであったが,今後は,重度障害者への対応についても十分に事前指導していくことが必要であることが明らかにされた。(表2,図3参照)