著者
大橋 きょう子
出版者
昭和女子大学
雑誌
學苑 (ISSN:13480103)
巻号頁・発行日
vol.815, pp.84-97, 2008-09

食用油脂が日常の食生活に普及し始め,油脂調理が家庭に定着する兆しが見えたと考えられる明治時代末期から大正時代末期までの19年間における食用油脂を用いた調理について,当時の婦人雑誌のひとつである『婦人之友』を調査対象として,食用油脂の種類および油脂調理の実態を調査し,特徴を明らかにした。日本料理は胡麻油を用いて揚げる調理が,支那料理では胡麻油およびラードを用いて妙める調理が多かった。日本料理および支那料理は,油脂を単独で使用する場合が多く,油脂の種類および油脂を用いた調理法としては,炒める,揚げる,焼く調理に限られていた。これに対して西洋料理は,炒める,揚げる,焼く(焼き付ける),煮る(煮込む),加熱用ソース,製菓材料,非加熱ソース,風味付けなどにバターをはじめとした食用油脂を使用し,しかもひとつの料理に複数の油脂を用いていた。特に西洋料理におけるバターの使用頻度は他の食用油脂に比べて最も多く,その調理方法および利用範囲も他の油脂類に比べて広いことが認められた。西洋料理同様に和洋折衷料理においても油脂を複数用いた調理が多く,調理法も多種多様であった。西洋料理の普及とともに,和洋折衷料理が誕生し定着した経緯の中で,油脂を用いた調理は増加傾向を示し,油脂の調理法は多様化したことが明らかとなった。明治時代以来,ひたすら西洋料理に目を向けその普及に努めてきた社会の風潮は,婦人雑誌の料理記事にも表れていたことを認めた。明治から大正時代にかけての油脂調理の大半は,西洋料理および和洋折衷料理であり,油脂を多量に使用する支那料理が一般家庭で日常的に調理できるには至っていなかったことが分かった。

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