- 著者
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塩田 教子
- 出版者
- 活水女子大学
- 雑誌
- 活水論文集. 生活学科編 (ISSN:0919584X)
- 巻号頁・発行日
- vol.41, pp.17-25, 1998-03
近年,食生活環境が変化して,家庭における行事食が衰微してきた。その原因は経済成長の結果,毎日「ハレ」の日のような食事が食べられるようになり,主婦が行事食に無関心になっため,子供達はその内容も知らずに成長した。しかし,子供達は国際社会の一員として日本民族の文化を理解しておく必要があり,そのため是非ともそれを経験し伝承することが大切と考えて,家庭において行事食の伝承が少なくなった現状では学校でその伝承を行う必要性を感じ,その指導要領を考察した。(1) アンケートによると学生達の行事食の喫食率はお正月料理,クリスマス料理,自分の誕生日の料理などが高く,また行事食を食べた経験はより伝承意識を高めるということがわかった。そして作ってみたい行事食の内容の選択では容易に作ることができる料理,和洋折衷料理,ご飯は混ぜご飯などが好まれ,時代に沿った新しい感覚の内容の献立が選ばれていた。(2) 行事食を指導した結果はある程度の基礎技能を習得した段階で,予め,調理に対する手順のフローチャートと作品のイメージを考えさせ,それをチェックしてやれば「料理法を読みとりながらの調理」の指導でも各自が作り上げる意欲が起こり,それまでの技能の復習と創造性を引き出せることが確認できた。(3) 食環境と行事食の伝承意識の調査では伝承意識は「手作り料理の食事が多いこと」や「ただ家で行事食を作ること」と相関がなく,「家で行事食を作って友達を招待すること」や「家族の慶事ごとにお祝い料理をよく食べる食環境」と相関が高いことを確認した。また,学校で行事食を作ることは行事食の特徴を把握させ,共食の喜びを経験させ,行事食に関心を持たせて伝承意識を高めることに役立つということも確認された。終わりに,行事食の献立資料をご提供いただきました北九州市のヘルスアップ料理研究会の栄養士の皆様に深く感謝いたします。