著者
塩田 教子
出版者
活水女子大学
雑誌
活水論文集. 生活学科編 (ISSN:0919584X)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.1-8, 1995-03

1991年より食肉は自由化されたが国産肉と比較して、輸入肉は熟成されていないので硬くて風味が少ないことなどが日本人に歓迎されない理由としてあげられている。しかし、国産肉より安価であることから、家庭料理に利用される可能性はある。そこで、輸入肉の肉質を改善するためにマリネ法を検討した。本報ではフローズン(輸入冷凍肉)を用いて、オイル系マリネとワイン系マリネが肉の柔らかさにおよぼす効果の差異を調べてみた。1) 焼く調理の場合ではオイル系マリネ処理3時間の試料の官能検査値は国産牛肉と比較して柔らかさ、肉汁性、味や匂いの好ましさ、総合評価とも高い値が得られ、この処理の効果が認められた。一方、ワイン系マリネ処理では効果は認められなかった。さらに、オイル系マリネ処理3時間の試料の理化学的性状では保水性が高くなり加熱後の重量は増加し、官能検査の肉汁性と一致した。物性値では針入度は高くなり、弾性率・強靱性・弾力性とも低値を示し、官能検査の柔らかさと一致した。これらのことから、フローズンの焼く調理用の肉は予めオイル系マリネ処理3時間行えば、国産牛肉よりもよい肉質に改善されることがわかった。2) 煮込み調理の場合ではワイン系マリネ処理3時間の試料の官能検査値は国産牛肉やオイル系マリネ処理試料と比較して柔らかさ、味の好ましさ、総合評価について高い値が得られ、S1との間に有意差がなかった。さらに、物性値では弾性率・強靱性・弾力性とも低値で官能検査の柔らかさと一致した。このことから、フローズンの煮込み用の肉はワイン系マリネ処理3時間行えば、国産牛肉と有意差のない肉質に改善されることがわかった。3) 挽き肉調理として最も利用されるハンバーグステーキ用の肉も予めオイル系マリネ処理3時間行うことによって肉質が改善され、国産牛肉製品と有意差のない製品ができることがわかった。
著者
塩田 教子
出版者
活水女子大学
雑誌
活水論文集. 生活学科編 (ISSN:0919584X)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.17-25, 1998-03

近年,食生活環境が変化して,家庭における行事食が衰微してきた。その原因は経済成長の結果,毎日「ハレ」の日のような食事が食べられるようになり,主婦が行事食に無関心になっため,子供達はその内容も知らずに成長した。しかし,子供達は国際社会の一員として日本民族の文化を理解しておく必要があり,そのため是非ともそれを経験し伝承することが大切と考えて,家庭において行事食の伝承が少なくなった現状では学校でその伝承を行う必要性を感じ,その指導要領を考察した。(1) アンケートによると学生達の行事食の喫食率はお正月料理,クリスマス料理,自分の誕生日の料理などが高く,また行事食を食べた経験はより伝承意識を高めるということがわかった。そして作ってみたい行事食の内容の選択では容易に作ることができる料理,和洋折衷料理,ご飯は混ぜご飯などが好まれ,時代に沿った新しい感覚の内容の献立が選ばれていた。(2) 行事食を指導した結果はある程度の基礎技能を習得した段階で,予め,調理に対する手順のフローチャートと作品のイメージを考えさせ,それをチェックしてやれば「料理法を読みとりながらの調理」の指導でも各自が作り上げる意欲が起こり,それまでの技能の復習と創造性を引き出せることが確認できた。(3) 食環境と行事食の伝承意識の調査では伝承意識は「手作り料理の食事が多いこと」や「ただ家で行事食を作ること」と相関がなく,「家で行事食を作って友達を招待すること」や「家族の慶事ごとにお祝い料理をよく食べる食環境」と相関が高いことを確認した。また,学校で行事食を作ることは行事食の特徴を把握させ,共食の喜びを経験させ,行事食に関心を持たせて伝承意識を高めることに役立つということも確認された。終わりに,行事食の献立資料をご提供いただきました北九州市のヘルスアップ料理研究会の栄養士の皆様に深く感謝いたします。
著者
伊佐 隆
出版者
活水女子大学
雑誌
活水論文集. 生活学科編 (ISSN:0919584X)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.9-15, 1995-03

市販のペクチン分解物と脂肪酸エステルおよび低温加熱の併用による抗菌作用について検討した結果、次のことが明らかになった。1.当該ペクチン分解物を市販しているアサマ化成(株)によると、この物質は酵母や乳酸菌にも効果があるということであったが、試験した結果、大腸菌とブドウ球菌および乳酸菌の一部に対してのみ抗菌効果を発揮した。2.酵母のZ.rouxiiについてさらに検討した結果、モノグリと低温加熱の併用が効果があることが明らかになった。3.乳酸菌のL.farciminisに対しては、モノグリと低温加熱の併用が顕著に効果があることが明らかになった。4.サルモネラ菌であるS.enteritidisについても検討した結果、顕著な効果ではないが、低温加熱の有無に関わらず、モノグリに抗菌効果があることが明らかになった。5.実際に、マヨネーズタイプ調味料に乳酸菌を接種して、これらのモノグリと低温加熱の効果をみたところ、若干の抗菌作用が認められた。以上の結果から、ペクチン分解物についてはみるべき効果は見いだせなかったが、モノグリと低温加熱の併用は、食品で問題となることの多い酵母、サルモネラ菌および特に乳酸菌に対して効果があることが明らかになった。今後は、さらに詳細にこの抗菌作用機作および具体的な食品への有効利用等を考えてゆく必要があるものと思われる。
著者
久木野 睦子
出版者
活水女子大学
雑誌
活水論文集. 生活学科編 (ISSN:0919584X)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.27-31, 1998-03

本研究はイカ外套膜をしょう油液中で加熱した場合の物性変化を官能的に評価するとともに,物性におよぼすしょう油の影響を明らかにするための一助として,しょう油の溶液特性の一つである低pHの作用について実験的に検索した。その結果,より低pHのしょう油溶液で加熱した方が筋繊維に平行に破断した場合の破断エネルギーの低下は大きく,筋繊維を横断して破断した場合の破断エネルギーは大きくなる傾向にあった。また,しょう油溶液と同等のpHを示す緩衝液による加熱でもこのことは追確認された。そのため,しょう油加熱によるイカ外套膜の物性変化にはしょう油のpHが大きく影響していることが本実験結果より推察された。また,官能検査による結果は機器測定によって得られた物性測定結果と一部異なる点もあるものの,おおむね同様の傾向を示しており,機器測定による物性測定の結果はある程度ヒトの感覚を反映するものであることが示唆された。