著者
甲斐村 美智子 久佐賀 眞理
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.143-152, 2008
被引用文献数
2

本研究の目的は,月経用布ナプキンの反復使用が,女子学生の不定愁訴に及ぼす影響を明らかにすることである.布ナプキンの使用経験が無い19〜22歳の女子学生32名を対象に,平成19年1月〜7月の間布ナプキンを使用してもらい,介入前から終了まで2ヵ月毎に自記式アンケート(月経の経験,不定愁訴(MDQ・VAS),月経観,自尊感情,性の受容,ライフスタイル)を実施し,月経毎に月経記録,介入終了後にインタビューを実施した.分析方法は,不定愁訴の関連要因を重回帰分析で,介入前の状態を基準値とし,その後2ヵ月毎の不定愁訴・関連要因の変化,並びに不定愁訴改善群・非改善群の変化をt検定で分析した.介入前の不定愁訴に影響を及ぼす要因は性の受容,肯定的月経観であった.介入後の変化を見ると,布ナプキン使用2ヵ月後に月経観,4ヵ月後に月経痛,6ヵ月後に不定愁訴,自尊感情及び性の受容が改善した.最初に変化した月経観の詳細変化では,「厄介」「自然」「衰弱」という順で有意な改善を示した.この変化と記録・インタビューの時系列変化から,布の感触とナプキン洗濯時の月経血の観察が月経観を「厄介」から「自然」に変化させ,それが不定愁訴,関連要因の改善につながっていた.不定愁訴改善群と非改善群を比較すると,介入前のMDQ改善群は月経時の「痛み」「行動変化」,VAS改善群は月経前から続く「痛み」「負の感情」がより強いという特徴が見られた.以上より,布ナプキン使用は月経周辺期の不定愁訴の改善に有効で,使用を継続することで自尊感情や性の受容の改善にも役立つことが明らかとなった.また,不定愁訴改善群と非改善群の比較から,布ナプキン使用が有効に作用する対象は月経周辺期の痛み,負の感情,行動制限が強い人であった.

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