著者
島内 憲夫
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.410-420, 2007-09
被引用文献数
1

本研究の目的は,ヘルスプロモーションの視点から主観的健康観(健康の定義)の年齢差・性差・年次差を明らかにし,その類型化を試みることにある.ヘルスプロモーションとは,「人々が自らの健康とその決定要因をコントロールし改善することができるようにするプロセスである.」この健康の決定要因は,遺伝,ヘルスサービス,ライフスタイル,環境要因が考えられるが,ヘルスプロモーションの主眼は,ダイエット,定期的な運動や禁煙そして家族や友人などとの良い人間関係,音楽や絵画などの趣味活動,さらには自然とのふれあいなどといったような幅広い健康的な生活習慣形成にある.人々の健康的な生活習慣形成は,科学的な証拠Evidence Based Medicine(EBM)に基づくと共に,ライフコースの中で生じる人々の様々な日常的諸経験や物語Narrative Based Medicine(NBM)にも基づいてつくられている.健康社会学では,この健康的な生活習慣の形成過程を「健康の社会化Health Socialization」と呼んでいる.健康の社会化とは,「人々が当該社会における健康知識,健康態度そして健康行動の様式を内面化することによって,真の自由と幸せを獲得する過程である.」本研究は,その過程の中でも「健康知識」と「健康行動の様式」を媒介する「健康態度」に注目し,その中心を成す「人々の主観的健康観」の類型化とその性差・年齢差・年次差を明らかにしようとした.なぜなら,生活習慣病が蔓延している現代社会において,人々の幅広い健康生活習慣を支援するシステムを構築するためには,まず人々がNBMの視点から形成している主観的健康観も明らかにしなければならないからである.本研究によって得られた人々の主観的健康観は次の6つに類型化された. (1)「病気がない,身体が丈夫,快食・快眠・快便」といった身体的な健康観 (2)「幸せ,家庭円満,生きがいの条件」といった精神的な健康観 (3)「仕事ができること,人間関係がよい」といった社会的な健康観 (4)「心身ともに健やかなこと」といった身体的・精神的な健康観 (5)「心も身体も人間関係もうまくいっていること」といった身体的・精神的・社会的な健康観 (6)「人を愛することができること,何事にも前向きに生きられること」といったスピリチュアル(霊的・魂的)な健康観 そして主観的健康観は,年齢差,性差,年次差があること,また加齢や時代の移り変わりと共に身体的健康観から精神的,社会的,スピリチュアル(霊的・魂的)な健康観に拡大していることが明らかになった.

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こんな論文どうですか? 人々の主観的健康観の類型化に関する研究 : ヘルスプロモーションの視点から(島内 憲夫),2007 http://t.co/Sklp12pt

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