著者
島内 憲夫
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.307-317, 2015 (Released:2015-12-03)
参考文献数
35

筆者の教育講演の焦点は,次の10点にある.①オタワ憲章設立前夜1980年代前半の動き,②オタワ憲章とバンコク憲章の特徴と相違,③健康の社会的決定要因(SDH),④Kickbuschの構想~健康教育からヘルスプロモーションへ~,⑤著者の日本でのヘルスプロモーション推進戦略,⑥人々の健康の捉え方,⑦健康はどこで・誰によって創られているのか,⑧健康格差社会の切り札,⑨幸福な生き方を支えるヘルスプロモーション,⑩ヘルスプロモーション哲学.ヘルスプロモーション活動は,人々の健康課題を共有し,解決し,共に推進することに焦点を置いている.その理由は,「健康は共に生み出すものだ」と考えているからである.それゆえ,分野間協力・住民参加等の人々の協働を必要としている.この協働は,人類が経験したことのないワクワクするほどの価値がある活動であり,人間性復活への活動(健康のルネサンス)であり,健康格差時代を力強く生き抜くための知恵なのである.21世紀を生きる我々人間は,未来をコントロールし,人生をあらゆる面において豊かなものとする,かつてないチャンスを与えられている.だからこそ,我々人間は自分の能力を全面的に発揮し人生を楽しみながら,世界のすべての人々と共にヘルスプロモーション活動を実践しなければならない.
著者
島内 憲夫
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.40-46, 2018-02-28 (Released:2018-02-28)
参考文献数
19

目的:WHOのヘルスプロモーション(HP)に関するオタワ憲章は世界の保健医療関係者にとってのバイブルであり,理念である.本報告は,1.HPの基本理念,2.HPを支える理論,3.HP推進の立役者,4.日本でのHPの登場・展開,5.国際的なHPの動向,6.今後のHP戦略について論じた.内容:ヘルスプロモーションとは,人々が自らの健康とその決定要因をコントロールし,改善することができるようにするプロセスである(オタワ憲章:1986年,バンコク憲章:2005年).HPの立役者は,Kickbusch IとNutbeam Dの二人である.HP活動は,人々の健康課題を共有し,解決し,共に推進することに焦点を置いている.その理由は,「共に生み出すものだ」と考えているからである.21世紀を生きる我々は,未来をコントロールし,人生をあらゆる面において豊かなものとすることが求められている.それゆえ,我々人間は自分の能力を全面的に発揮し,人生を楽しみながら,世界のすべての人々と共にヘルスプロモーション活動を実践しなければならない.結論:そのためには,HPと協働できる健康と幸福を目指した新しい健康教育理論の構築に向かっての努力が必要である.
著者
島内 憲夫
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.410-420, 2007-09
被引用文献数
1

本研究の目的は,ヘルスプロモーションの視点から主観的健康観(健康の定義)の年齢差・性差・年次差を明らかにし,その類型化を試みることにある.ヘルスプロモーションとは,「人々が自らの健康とその決定要因をコントロールし改善することができるようにするプロセスである.」この健康の決定要因は,遺伝,ヘルスサービス,ライフスタイル,環境要因が考えられるが,ヘルスプロモーションの主眼は,ダイエット,定期的な運動や禁煙そして家族や友人などとの良い人間関係,音楽や絵画などの趣味活動,さらには自然とのふれあいなどといったような幅広い健康的な生活習慣形成にある.人々の健康的な生活習慣形成は,科学的な証拠Evidence Based Medicine(EBM)に基づくと共に,ライフコースの中で生じる人々の様々な日常的諸経験や物語Narrative Based Medicine(NBM)にも基づいてつくられている.健康社会学では,この健康的な生活習慣の形成過程を「健康の社会化Health Socialization」と呼んでいる.健康の社会化とは,「人々が当該社会における健康知識,健康態度そして健康行動の様式を内面化することによって,真の自由と幸せを獲得する過程である.」本研究は,その過程の中でも「健康知識」と「健康行動の様式」を媒介する「健康態度」に注目し,その中心を成す「人々の主観的健康観」の類型化とその性差・年齢差・年次差を明らかにしようとした.なぜなら,生活習慣病が蔓延している現代社会において,人々の幅広い健康生活習慣を支援するシステムを構築するためには,まず人々がNBMの視点から形成している主観的健康観も明らかにしなければならないからである.本研究によって得られた人々の主観的健康観は次の6つに類型化された. (1)「病気がない,身体が丈夫,快食・快眠・快便」といった身体的な健康観 (2)「幸せ,家庭円満,生きがいの条件」といった精神的な健康観 (3)「仕事ができること,人間関係がよい」といった社会的な健康観 (4)「心身ともに健やかなこと」といった身体的・精神的な健康観 (5)「心も身体も人間関係もうまくいっていること」といった身体的・精神的・社会的な健康観 (6)「人を愛することができること,何事にも前向きに生きられること」といったスピリチュアル(霊的・魂的)な健康観 そして主観的健康観は,年齢差,性差,年次差があること,また加齢や時代の移り変わりと共に身体的健康観から精神的,社会的,スピリチュアル(霊的・魂的)な健康観に拡大していることが明らかになった.
著者
廣田 憲威 北條 雄也 西岡 香代 松村 直美 島内 憲夫
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.214-221, 2019-04-10 (Released:2020-04-10)
参考文献数
12
被引用文献数
4 1

Aozora Pharmacy is a community pharmacy that has acquired ISO9001-2015 certification and recognized as a “Health Support Pharmacy.” In order to improve the prescription service, we conduct an annual patient satisfaction survey. Using the results from the September 2018 survey (effective responses: 422 persons), a review was conducted on the usefulness of logistics regression analysis (LRA) and the factors that would enhance patient satisfaction at the health support pharmacy by running a conventional method of portfolio analysis (PA) and new LRA. By PA, “Staff’s greeting,” “Staff’s attitude,” “Easy language use,” “Pharmacist’s explanation,” “Environment of pharmacy,” “Privacy,” and “Waiting time” were classified as important items. On the other hand, by LRA, “Staff’s greeting,” “Pharmacist’s explanation,” and “Waiting time” showed a significant difference (P < 0.05). We have confirmed that LRA is available as a method of analysis. At a community pharmacy, importance is placed on the “functions to become a patient’s main pharmacy.” This time, the three items that showed a significant difference in LRA are all important factors for the “function to become one’s own pharmacy”; it is critical for a community pharmacy to make efforts with focus placed on these items.
著者
島内 憲夫
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.410-420, 2007-09-30 (Released:2014-11-12)
参考文献数
39
被引用文献数
2

本研究の目的は, ヘルスプロモーションの視点から主観的健康観 (健康の定義) の年齢差. 性差・年次差を明らかにし, その類型化を試みることにある. ヘルスプロモーションとは, 「人々が自らの健康とその決定要因をコントロールし改善することができるようにするプロセスである. 」この健康の決定要因は, 遺伝, ヘルスサービス, ライフスタイル, 環境要因が考えられるが, ヘルスプロモーションの主眼は, ダイエット, 定期的な運動や禁煙そして家族や友人などとの良い人間関係, 音楽や絵画などの趣味活動, さらには自然とのふれあいなどといったような幅広い健康的な生活習慣形成にある. 人々の健康的な生活習慣形成は, 科学的な証拠EvidenceBased Medicine (EBM) に基づくと共に, ライフコースの中で生じる人々の様々な日常的諸経験や物語Narrative Based Medicine (NBM) にも基づいてつくられている. 健康社会学では, この健康的な生活習慣の形成過程を「健康の社会化Health Socialization」と呼んでいる. 健康の社会化とは, 「人々が当該社会における健康知識, 健康態度そして健康行動の様式を内面化することによって, 真の自由と幸せを獲得する過程である. 」 本研究は, その過程の中でも「健康知識」と「健康行動の様式」を媒介する「健康態度」に注目し, その中心を成す「人々の主観的健康観」の類型化とその性差・年齢差・年次差を明らかにしようとした. なぜなら, 生活習慣病が蔓延している現代社会において, 人々の幅広い健康生活習慣を支援するシステムを構築するためには, まず人々がNBMの視点から形成している主観的健康観も明らかにしなければならないからである. 本研究によって得られた人々の主観的健康観は次の6つに類型化された. (1) 「病気がない, 身体が丈夫, 快食・快眠・快便」といった身体的な健康観 (2) 「幸せ, 家庭円満, 生きがいの条件」といった精神的な健康観 (3) 「仕事ができること, 人間関係がよい」といった社会的な健康観 (4) 「心身ともに健やかなこと」といった身体的・精神的な健康観 (5) 「心も身体も人間関係もうまくいっていること」といった身体的・精神的・社会的な健康観 (6) 「人を愛することができること, 何事にも前向きに生きられること」といったスピリチュアル (霊的・魂的) な健康観 そして主観的健康観は, 年齢差, 性差, 年次差があること, また加齢や時代の移り変わりと共に身体的健康観から精神的, 社会的, スピリチュアル (霊的・魂的) な健康観に拡大していることが明らかになった.
著者
島内憲夫
雑誌
保健婦雑誌
巻号頁・発行日
1992
被引用文献数
1
著者
島内 憲夫 高村 美奈子
出版者
順天堂大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

ハッピネス・ライフ・デザインは、人間が生まれて、生活する中で周囲の環境の影響を受けて染み付いてしまった悪い習慣(意識や行動)を改善し、良い習慣(意識や行動)を形成するための方法の開発を意図している。その改善方法を提案するための評価シートとして「ハッピネス・ライフ・チェックシート」の開発を試みた。そのチェック項目は、「快食・快眠・快動・快笑・快楽・快生」ブラス「幸福感」の7項目、基礎的な情報として「健康観(主観的健康の定義)」「健康感(主観的健康状態)」「病歴」「幸せを感じる時」の4項目である。調査は、千葉県Y市、S市、S町、岡山県M町で行った。すべての地域でハッピネス・ライフ。チェックシートを用いて講座前と講座後の比較を行った。特に岡山県のM町では介入群と対象群とに分け、介入群にはハッピネス・ファクター(幸福因子)を発見・促進するため「笑い・人間関係・自信」に焦点を当てた「ふれあい生き生き講座」を行い、対象群にはリスク。ファクター(危険因子)の発見・改善のため「運動・栄養」に焦点を置いた「健やか講座」を行った。講座終了後の調査の結果、介入群・対象群共に「心身とも健やかなこと」の健康観が主流を占めたが、特徴的な差をみると介入群では「心も身体も人間関係も良いこと」・「前向きに生きること」・「人を愛することができること」など身体的・精神的。社会的・スピリチュアル(霊的・魂的)な健康観へと広がりをみせた。一方、対象群は「病気でないこと」、「快食・快眠・快便」など、身体の健康を意識した狭い健康観が多かった。また「幸福感」も介入群の方が高かった。今後はこの種の介入研究を継続し、リスク・ファクターをコントロールすることを重視した健康講座のみでなく、ハッピネス・ファクターを支援する健康講座のカリキュラムについても考えていきたい。