- 著者
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中村 俊也
- 出版者
- つくば国際大学
- 雑誌
- 研究紀要 (ISSN:13412078)
- 巻号頁・発行日
- vol.14, pp.109-123, 2008
ロシアの研究書、中国の近人、梁啓超を対象とした内容につき論述する。著者は資料として『専集』、とりわけ、そのうちの『新民書』などを選び、中国近時の1898〜1908年という時期に彼の国の政治が、君主政から共和政、そしてやがて社会主義に臨むという変動の際、中国の典型的知識人が、理想の政治形態は何で、それを荷なう人民はどのようであれば、国民国家としての責任を果し得るのか、という問題を扱う。結論としては徳性の有る、自覚の有る人民に期待するのが、当時も、今日も望まれる、という。著者も2001年という激動の時期に本書を著わしたわけで、つまりは、ロシアの社会主義から資本主義へのシステム交替の時に自からの身をそこに置いており、そのことは、行文の間に表出し、一層のリアリテイ、現代性を与えている。これを、心理-社会をとらえるメソドロジイーとして、当面6つの角度から考察し、著者の見解が当時の単なる掘り返しに止まらず、目下の社会の生動の行方を見定めており、解釈学的立場に立っていることが、確認できた。