著者
内藤 歓修
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学マネジメント学部紀要 (ISSN:13481118)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.93-113, 2008-03

Jane Austenの前期の小説3作品の中で,本作品は書き直しの箇所が極めて少なく,初期の形態を保ったままで出版された.作者は作品を書き上げた後も,いろいろ手を加え改編したと言われている.本作品は出版者とも問題があって,書き上げた後殆ど手を加えていない状態で出版されたので,作者の小説作法の原型が読み取れる.Austenの6編の小説は全て「夫探し」がテーマになっている.ヒロインは,将来夫となる若い男性との交際や周囲の人々との付き合いを通じ,幾つかの障害を乗り越えて,人間的成長をしていき,理想的な男性と結婚するに到るのである.特別異常な事件も起らず,日常の平凡な生活の中でストーリーは展開していく.その典型的な形は既に本作品に現れている.しかし,本作品は当時流行のゴッシク小説に対して,批判的な面を多くもっていて,明らかにそのパロディである箇所が随所に見られる.ヒロインが成長をしながら結婚を成就していく筋と,ゴッシク小説のパロディ的側面を両立させながら物語は進んで行く.Northanger Abbeyは作者の前期の作品で,しかも手を加えることが少なかったために,ヒロインを始めとして登場人物像が粗削りで,完成度が低い代わりに,作品全体が若々しい感じを与え,かつ作者の基本的な小説作法がはっきりと読み取れ,興味深いものとなっている.本論ではヒロインらしくないヒロインのCatherineがゴシック趣味に惑溺しながらもそこから脱却し,またThorpe兄妹の欺瞞に満ちた人間性を見抜けるようになり,人間的成長をして,Henryと結ばれて行く過程を分析し,考察する.

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こんな論文どうですか? Northanger Abbey:未完成のヒロイン : Jane Austenの小説の原型,2008 http://ci.nii.ac.jp/naid/110007138609

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