著者
内藤 歓修
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学文学部紀要 (ISSN:13481444)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.A63-A78, 2010-03-15

自伝的小説Sons and Lovers で自らの青春時代の苦悩を描ききったD. H. ロレンスは、以後、直面している生活上の問題をテーマにして、作品を書くようになる。Sons and Lovers 後に取りかかったThe Rainbow は当時の作者の生活で解決が不可欠な重要問題である、「愛」というテーマを真正面から取り上げている。 心の底から愛し合える女性と出会うことができたら、その女性は恩師の妻であったという困難を乗り越え、結婚する。許されざる行動を正当化しようと、愛の勝利と賛歌を歌い上げるために書いた小説が本作品である。 これは親子3代に亘る、愛の姿を描いている。いずれの代も未知の世界に憧れ、それを手に入れようと努力している。最初の代の愛と結婚は、未だ自我が充分に目覚めきっていない、古き良き時代の牧歌的環境の中で描かれ、男女間で深刻な自我の闘争は生じていない。しかし、2代目の愛は壮絶な自我の闘争を引き起こす。互いに自我を主張し合い、譲ることが少ない。妻が子供を身籠もり、女性の根源的な力を誇示することによって、夫を服従させて行く。この2つの愛と結婚は一般にありがちな姿であり、さして珍しいものとは言えない。 しかし、3代目の愛の闘争になると様相は一変する。主人公Ursula は理想の男女の愛を恋人Skrebensky に求める。強烈な自我を持つ彼女は、従来の因習的な結婚を否定し、自立した自我の均衡の上に築かれた愛を求めて、彼と激しい闘争を繰り返す。どんな逆境にあっても妥協しない。最後には、心身共に傷付いた上に、求める愛を得られなかったが、再生した彼女が明日への希望を虹に見て、新たに前進して行くことが示される。 本稿では、3代の夫婦における理想の愛の探求の形を分析し、現実と理想の愛の落差に対する彼らの対応の姿を明らかにしたい。
著者
内藤 歓修
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学マネジメント学部紀要 (ISSN:13481118)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.93-113, 2008-03

Jane Austenの前期の小説3作品の中で,本作品は書き直しの箇所が極めて少なく,初期の形態を保ったままで出版された.作者は作品を書き上げた後も,いろいろ手を加え改編したと言われている.本作品は出版者とも問題があって,書き上げた後殆ど手を加えていない状態で出版されたので,作者の小説作法の原型が読み取れる.Austenの6編の小説は全て「夫探し」がテーマになっている.ヒロインは,将来夫となる若い男性との交際や周囲の人々との付き合いを通じ,幾つかの障害を乗り越えて,人間的成長をしていき,理想的な男性と結婚するに到るのである.特別異常な事件も起らず,日常の平凡な生活の中でストーリーは展開していく.その典型的な形は既に本作品に現れている.しかし,本作品は当時流行のゴッシク小説に対して,批判的な面を多くもっていて,明らかにそのパロディである箇所が随所に見られる.ヒロインが成長をしながら結婚を成就していく筋と,ゴッシク小説のパロディ的側面を両立させながら物語は進んで行く.Northanger Abbeyは作者の前期の作品で,しかも手を加えることが少なかったために,ヒロインを始めとして登場人物像が粗削りで,完成度が低い代わりに,作品全体が若々しい感じを与え,かつ作者の基本的な小説作法がはっきりと読み取れ,興味深いものとなっている.本論ではヒロインらしくないヒロインのCatherineがゴシック趣味に惑溺しながらもそこから脱却し,またThorpe兄妹の欺瞞に満ちた人間性を見抜けるようになり,人間的成長をして,Henryと結ばれて行く過程を分析し,考察する.