著者
小川 清次
出版者
大阪府立工業高等専門学校
雑誌
大阪府立工業高等専門学校研究紀要 (ISSN:0387365X)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.1-10, 2008-07

本稿はウィトルーウィウス『建築の書』における「技術」と「学」との関係を考察したものである.この書は紀元前1世紀に,「建築」やさまざまな人工物の「教本」として著された.しかるに,そこには単に設計指南書的な性格だけでなく,建築や人工物の設計,製作という営みのなかに学の契機を取り出そうとする意図をも読み取ることができる.本論考では,それらを「自然学」(ギリシア自然哲学)および哲学,幾何学(シュムメトリア論)に限定する手続きを先ず展開した.そして,「自然学」および哲学が『建築の書』でどのような基盤をなしているか,概観し,次いで,『建築の書』の設計理論の骨格をなすシュムメトリア論を簡単ながらもやや詳しく,現代的に解釈した.最後に,『建築の書』において建築という営みのうちに見出されるとされる「学」のあり方を,考察した.

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