- 著者
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千葉 聡
- 出版者
- 首都大学東京
- 雑誌
- 小笠原研究 (ISSN:03868176)
- 巻号頁・発行日
- vol.33, pp.145-154, 2008-03
- 被引用文献数
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筆者は2007年6月に東京都と首都大学東京の南硫黄島の学術調査隊に参加する機会を得て、南硫黄島の陸産貝類の調査を行なった。南硫黄島の本格的な陸産貝類相の調査は今回が初めてであり、これまでその詳細は謎に包まれていた。調査の結果、新たに9種の分布が確認され、南硫黄島には13種の陸産貝類が分布することが明らかになった。そのうち4種が未記載の南硫黄島固有種と考えられる。特に山頂部の雲霧林において最も高い種多様性が認められ、一方、海岸部には陸産貝類は全く生息していなかった。また小笠原群島では戦前に絶滅したタマゴナリエリマキガイが南硫黄島に現生していることを確認した。今回新たに見出された種の中には、同種ないし近縁の種が伊豆諸島には分布するが、小笠原群島には分布しない種が含まれていた。以上の知見から、南硫黄島の陸産貝類は、小笠原群島にはない特異な要素を含み、生物地理学的に独自性の高い極めて貴重なファウナであることが示された。