- 著者
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陣内 正敬
- 出版者
- 関西学院大学
- 雑誌
- 言語と文化 = 語言与文化 (ISSN:13438530)
- 巻号頁・発行日
- vol.11, pp.47-60, 2008-03
日本語学習者がカタカナ語(外来語)を学習する際、どのような点にその困難を感じているかを探る目的で、全国的なアンケート調査を行った。調査は2006年7月から10月にかけて、全国の主な日本語教育機関(日本語学校、研修施設、大学、大学院など)に配布し、総計479人の外国人日本語学習者から回答を得た。彼らの母語別の内訳は、中国語49.7%、韓国・朝鮮語20.0%、英語4.2%、その他の言語26.1%であった。この調査から以下のことが明らかになった。1)カタカナ語の習得に困難さを感じるのは、学習者の母語によって大いに異なる。中国語を母語とする学習者が最も困難さを感じ、韓国・朝鮮語とその他の言語がほぼ同程度でそれに次、英語母語話者は最も抵抗が少ないことがわかった。これは、学習者の母語における語彙が、カタカナ語の由来となっている英語をはじめとする西洋語と、どの程度共通しているかによると思われる。2)カタカナ語学習要望は、学習者の英語学習期間の長短と関連が見られた。特に中国語母語話者に関しては、英語学習歴を3〜5年、6〜9年、10年以上と3つのグループに分けて比較すると、期間が短いほど熱烈な学習要望が出た。これまで日本語教育においては、カタカナ語教育はまともに扱われてこなかった。ただ、近年のカタカナ語の急増ぶりと日本語語彙の語種割合の変化を考えれば、カタカナ語教育の充実は緊急の課題といえるだろう。