著者
松崎 昇
出版者
上武大学経営情報学部
雑誌
上武大学経営情報学部紀要 (ISSN:09155929)
巻号頁・発行日
no.33, pp.1-38, 2009-03

わが国は1990年代以降、長期にわたって資産デフレの状態にある。もっとも昨今は資産デフレも底を打ったようにもみえるが、なお予断を全く許さないし、資産価格の極度の低迷状況に変わりはない。また経済成長率も、既に70年代以降低下しているのであるが、この90年代以降もう一段低落してしまった。(超)長期にわたる停滞である。都合、近年の日本経済は<資産デフレと停滞>という二重の長期低迷状態にあることになる。ではこの二重の長期低迷貴重を、私達はどうしたらよいのだろうか。ここで論理的には、物価変動は流通論に立脚した表層的短期的当面的な問題であるのに対して、経済成長は生産論に立脚した深層的長期的究極的な問題であることを想起しよう。もっとも資産価格はストック上の概念であってフロー上の概念たる一般物価とは異なる面をもつが、大きく括るならば物価の一環であることに変わりはない。ここから、なによりもまず前者(物価問題)の現在的難問形態たる資産デフレを止めなければならないことがわかる。資産デフレからの脱却である。停滞からの脱却はその後の話である。資産デフレから脱却するためには、まずインフレ・ターゲット政策を核とするリフレ金融政策を大胆に採らなければならない。需要刺激的なマクロ経済政策の実施である。しかもこのインフレ・ターゲット政策は、当初の目的を達成したのちも、継続的に維持していくことが望ましい。2〜3%前後のインフレ(目標とその実現)を常態とするわけであり、以降これが恒常的標準的な金融政策となるわけである。これは従来、デフレ脱却策として提示されてきたものであるが、資産デフレ脱却策としても有効である。だがそれだけでなく、資産(ストック)論上にある資産デフレ(ストックデフレ)からの脱却策としては、資産界固有の対策も必要である。そもそもわが国は既に資産大国(ストック大国)になっているからして、資産が経済のなかで占める位置・意味は大変に大きくなっている。しかも現代における最先端経済国においては、本来的にデフレと低利が常態となりつつある。したがって、まず一般に、資産面における変調に対しては、その度合いが大きい場合、国民の経済生活・企業の経済活動を守るために、資産市場・価格を安定させる政策も直接に打ち出すべきである。ましてや、近年みられたような、否現在も続いている激甚な資産デフレに対しては、直接に強力な資産リフレ政策を打たなければならない。やや具体的には、民間合同による資産市場徹底整備のほか、日銀によるTOPIX連動型・東証REIT指数連動型上場投信(ETF)の大量買いオペ、およびとりわけ政府による大都市再開発プロジェクト発動等の公的大型実需を執行すべきであろう。その財政的な裏付けとしては、政府紙幣発行等を用いればよいのではないか。インフレ・ターゲット対策というリフレ政策の継続的展開、および大都市再開発プロジェクト等による協力な資産リフレ政策の展開、合わせて<ダブルリフレ政策>により、<ダブル物価>を常時微インフレ気味に保つこと、その動的安定性を図ること、これがわが国の今後の金融・経済政策となるべきである。

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現代日本経済における長期資産デフレについて(上武大学経済情報学部 松崎昇氏) http://t.co/kY68cMZS
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