著者
石原 美里
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.1160-1164, 2009-03-25

本研究では,Mbh 1.1.50に見られる「ウパリチャラから始まるバーラタ」という語が,Mbhのテキスト形成における重要な手掛かりになるとみなし,この語がヴァイシャンパーヤナの語りが開始されるMbh 1.54を冒頭とするMbhテキストを指したものであると推測する.一方,ヴァス・ウパリチャラ物語はMbh 1.57に語られ,そこでヴァス・ウパリチャラ王はヴィヤーサ仙の母であるサティヤヴァティーの実父,さらにクル王家の直接的な祖先として位置付けられる.しかし,Mbhの他の箇所,および他の諸資料において,ヴァス・ウパリチャラ王とクル王家はほぼ関連を持たない.この矛盾は,ヴァス・ウパリチャラ物語は元来Mbhの外の文脈に存在していたが,サティヤヴァティーの身分を王家に相応しいものとする為,さらにはマツヤ王家の正統性をも保証する為,あるMbh編者が幾分の改訂を加えた後,それをMbhの冒頭部(Mbh 1.54の直後)に挿入したと仮定することにより解決が可能である.その際,ヴァス・ウパリチャラ王の5人の息子に対する国土分割のエピソードは要約され,ヴァス・ウパリチャラ王によるサティヤヴァティーとマツヤ王の誕生のエピソードが新たに創作されたと考えられる.

言及状況

Twitter (1 users, 1 posts, 0 favorites)

こんな論文どうですか? Vasu Uparicara説話をめぐるMahabharataテキストの形成過程,2009 http://ci.nii.ac.jp/naid/110007160524

収集済み URL リスト