- 著者
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古里 百合子
辻丸 秀策
大岡 由佳
鋤田 みすず
福山 裕夫
- 出版者
- 久留米大学
- 雑誌
- 久留米大学文学部紀要. 社会福祉学科編 (ISSN:13455842)
- 巻号頁・発行日
- vol.4, pp.29-33, 2004-03
現在,不妊治療を受けている人は,1年に推計28万5000人といわれている.不妊治療は,この20年間の間にめざましい進歩を遂げている.しかし様々な新技術の影で,多くの葛藤も生まれている.葛藤の背景には,「結婚したら子供を生むのは当然」という潜在的な意識や,治療を辞めたら後悔するという不安,また最近は妊娠を望む女性の年齢が高くなり,年齢的限界によるものなどがある.一方,不妊に悩む人,不妊の問題を抱えた人のためのソーシャルサポートの一環として,産婦人科医や看護師などでつくる「日本不妊カウンセリング学会」が2002年秋に設立された.国も2004年までに各都道府県に「不妊専門相談センター」を1ケ所設置する予定で,2003年4月現在で28ケ所設置された(九州では佐賀県の中部保健所と大分県の大分県立病院内に設置されている).また国は「我が国における今後の不妊カウンセリングのあり方」の中でカウンセラーの他に「生殖医療コーディネーター」「不妊看護認定看護師」「遺伝カウンセラー」の役割を掲げ,生まれてくる子どもを養育するための社会的安定度などを調査する上でソーシャルワーク的かかわりが必須だとし,社会福祉士や精神保健福祉士にも期待を寄せている.本稿では,不妊治療に伴う心理的葛藤とその背景,さらにはソーシャルワークの立場から,不妊をどう支えていけるか等について,症例を通して検討を行い若干の考察を加えた.