著者
辻丸 秀策 恵紙 英昭 福山 裕夫 内村 尚直
出版者
久留米大学
雑誌
久留米大学文学部紀要. 社会福祉学科編 (ISSN:13455842)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.15-21, 2001-03
被引用文献数
1

外来通院中のてんかん患者の運転状況の実態を明らかにするため,外来通院中の18才以上のてんかん患者(512名)を対象として,自動車免許の有無,運転状況,発作頻度,発作型,事故との関連性などについて,面接調査を行い,さらに発作が2年以上抑制されているてんかん患者の交通事故率について検討した.その結果,免許取得率は41%で,運転率は34%であった.次に,免許保有者の事故率は,41%で,その発作型は,複雑部分発作と二次性全般化発作の合計が,約8割を占めていた.しかし,事故の原因が発作であったものは19%であり,発作による事故は相対的に少なかった.また,この数値は,事故経験者の過去の運転歴全期間を通じての結果であるため,調査時点より過去1年間に限ってみた場合,事故率は約3.9%であった(福岡県内の事故発生率が約4.5%).このことから,必ずしもてんかん患者の事故率が高いとは考えられないと思われた.さらに,てんかんが治癒可能な疾患であるという事実から,現行道路交通法において欠格事由とされているてんかん患者と自動車運転免許について臨床的立場から考察した.
著者
大岡 由佳 辻丸 秀策 古里 百合子 鋤田 みすず 福山 裕夫 前田 正治
出版者
久留米大学
雑誌
久留米大学文学部紀要. 社会福祉学科編 (ISSN:13455842)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.17-27, 2004-03

本論では,犯罪被害者に認められる心的外傷,なかんずく監禁被害者の心理的問題について,2000年に起こった西鉄バスジャック事件被害者の様子から考察した.マスコミ報道による資料のほか,実際の被害者の治療経過を提示し,Symonds Mによる4段階の心理反応期に基づいて,被害者の心理的変化を分析した.また,このような被害者に対する適切なケアや支援のあり方についても論じた.
著者
大岡 由佳 辻丸 秀策 菊池 哲子 大川 絹代 大西 良 鋤田 みすず 岩永 直美 福山 裕夫
出版者
久留米大学
雑誌
久留米大学文学部紀要. 社会福祉学科編 (ISSN:13455842)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.47-56, 2005-03

ホームレス問題とは,大都市だけの問題ではなく今や地方都市においても多くのホームレスを抱える事態に陥っている.本稿ではまず,ある地方都市においてDV(ドメスティック・バイオレンス)の行き着く先として路上等生活となった高齢女性に対する,ソーシャルワークの経過を報告する.支援開始に当たって,相談者は,現実に対する絶望から死にたいという思いが出現するが,地域における安心できる住まいの確保,福祉制度を駆使して経済面の保証など,生活環境の整備をしていく中で,心身共に落ち着きを取り戻し安定していったと考えられるケースである.考察では,ホームレスを取り巻く問題(住居問題・健康上の問題・自尊心の問題・関係性の問題・ソーシャルワーカー不在の問題・社会の認識と施策上の問題)を指摘し,ホームレス支援の方向性を模索する.また,ホームレス支援において,国の施策上比重の低い位置にある福祉的アプローチとしてのソーシャルワークの意義と重要性を提起する.
著者
古里 百合子 辻丸 秀策 大岡 由佳 鋤田 みすず 福山 裕夫
出版者
久留米大学
雑誌
久留米大学文学部紀要. 社会福祉学科編 (ISSN:13455842)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.29-33, 2004-03

現在,不妊治療を受けている人は,1年に推計28万5000人といわれている.不妊治療は,この20年間の間にめざましい進歩を遂げている.しかし様々な新技術の影で,多くの葛藤も生まれている.葛藤の背景には,「結婚したら子供を生むのは当然」という潜在的な意識や,治療を辞めたら後悔するという不安,また最近は妊娠を望む女性の年齢が高くなり,年齢的限界によるものなどがある.一方,不妊に悩む人,不妊の問題を抱えた人のためのソーシャルサポートの一環として,産婦人科医や看護師などでつくる「日本不妊カウンセリング学会」が2002年秋に設立された.国も2004年までに各都道府県に「不妊専門相談センター」を1ケ所設置する予定で,2003年4月現在で28ケ所設置された(九州では佐賀県の中部保健所と大分県の大分県立病院内に設置されている).また国は「我が国における今後の不妊カウンセリングのあり方」の中でカウンセラーの他に「生殖医療コーディネーター」「不妊看護認定看護師」「遺伝カウンセラー」の役割を掲げ,生まれてくる子どもを養育するための社会的安定度などを調査する上でソーシャルワーク的かかわりが必須だとし,社会福祉士や精神保健福祉士にも期待を寄せている.本稿では,不妊治療に伴う心理的葛藤とその背景,さらにはソーシャルワークの立場から,不妊をどう支えていけるか等について,症例を通して検討を行い若干の考察を加えた.
著者
鋤田 みすず 辻丸 秀策 大西 良 岩永 直美 大岡 由佳 山口 智哉 福山 裕夫 石田 重信 牧田 潔 内野 俊郎 Misuzu Sukita
出版者
久留米大学文学部
雑誌
久留米大学文学部紀要. 社会福祉学科編 = "Bulletin of Faculty of Literature, Kurume University. Social welfare" (ISSN:13455842)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.57-67, 2005-03-31

精神障害を持つ家族(患者家族)と精神障害者とかかわりのない家族(一般家族)を対象に統合失病症に対するイメージと社会的距離を多面的調査から検討を行った.その結果,患者家族は一般家族よりも社会的距離は低く,精神障害に対する知識も豊富であることがわかった.しかし,病気に対する知識は豊富であるにもかかわらず,統合失調症に対するイメージは一般家族と変わらず危険なイメージであった.一般家族は,精神障害者と触れ合う機会がないのが現状であったため,主体的な関係として接触経験を行うことの必要性と,啓発活動や施設の開放化などの積極的な活動が大切だということが考えられた.また,患者家族に対しては,家族のニーズを踏まえた上で具体的な情報を提供していくことと生活の中で活かしていけるようなサポートの必要性を感じた.
著者
大岡 由佳 辻丸 秀策 大西 良 福山 裕夫 矢島 潤平 前田 正治
出版者
久留米大学
雑誌
久留米大学文学部紀要. 社会福祉学科編 (ISSN:13455842)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.85-95, 2006-03

10年前の阪神淡路大震災を契機に,本邦においても消防隊員の惨事ストレスによるメンタルヘルスの悪化が論じられるようになってきた.実際,自然災害や火事などが頻発する中で,消防隊員の活躍は目覚ましいものがあるが,一方で,消防隊員の責任や負担は増大しており一般成人と比較して特異なストレス状況下にある.それにも関わらず,本邦では,消防隊員のメンタルヘルスに焦点を当てるようになったのは近年のことであり,消防隊員の全体像を把握し,対策を講じていくには確固とした調査報告が示されていない現状にある.本論文では,消防隊員のメンタルヘルスの全体像を把揺すべく,惨事ストレスを中心に調査を実施した.対象は,A市481名の現役消防隊員で,回答してもらった質問紙に関しては,多角的に統計処理し結果検討を加えた.その結果,消防隊員は,多くの者が職務に従事する中でストレスを感じており,35%の心身の不調と,12.2%のPTSD症状を呈する者が見受けられた.消防隊員の8割が精神的ケアを必要と考えていることからも,消防局はその地域に根ざした惨事ストレス対策を講じていく必要があることが明らかとなった.
著者
大岡 由佳 辻丸 秀策 大西 良 ポドリヤク ナタリア 藤島 法仁 末崎 政晃 津田 史彦 福山 裕夫
出版者
久留米大学文学部
雑誌
久留米大学文学部紀要 社会福祉学科編 (ISSN:13455842)
巻号頁・発行日
no.7, pp.43-56, 2007-03

2004年12月に当事者・遺族,その支後者が待望した「犯罪被害者等基本法」が成立し,そのなかで多岐にわたる施策が現在検討されつつある.今までの犯罪被害者等の抱える問題は多岐にわたっていたが世間に知られることは少なかった.本稿では,それら犯罪被害者を取り巻く問題点を一次被害,二次被害,三次被害に分けて論じ,今後の被害者支援にかかわる諸団体についての現状と課題について明らかにした.
著者
大西 良 辻丸 秀策 大岡 由佳 鋤田 みすず 福山 裕夫
出版者
久留米大学
雑誌
久留米大学文学部紀要. 社会福祉学科編 (ISSN:13455842)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.67-75, 2006-03
被引用文献数
1

本研究の目的は,精神保健福祉現場実習における学生の自己イメージ構造とその変化,さらに自己イメージ形成に影響を与える要因を明らかにすることであった.結果は以下の通りである.実習前の自己イメージとして「社交性」「魅力的」「繊細さ」の3因子が抽出され,実習後では「自主性」「誠実性」「積極性」の3因子が得られた.実習後の3因子は先行研究の精神科医療従事者の自己イメージと酷似しており,学生が実習を経験することで精神科医療従事者の自己理解へと接近していることが明らかとなった.また,ボランティア経験と実習前の「社交性」因子,実習後の「自主性」「誠実性」因子との間で有意な関連性がみられ,ボランティア経験の有無が自己イメージの形成要因になっていることが明らかになった.さらに,教員や友人のサポートが,「自主性」の形成の肯定的要因になっている一方で,有害ストレスが自己イメージの形成の否定的要因であることが明らかとなった.