著者
竹ノ山 圭二郎 原岡 一馬
出版者
久留米大学大学院心理学研究科
雑誌
久留米大学心理学研究 (ISSN:13481029)
巻号頁・発行日
no.2, pp.49-61, 2003

本研究の目的は,いじめ状況における被害者と周囲の者とのいじめ判断がどのように違うのかを明らかにすることであった。実験1では,被験者は被害者または傍観者条件にランダムに割りふられた。そして,いじめについての判断の違いが検討された。その結果,被害者よりも傍観者条件の被験者の方が,よりその状況はいじめであると判断する傾向があった。実験2では,被害者-傍観者という観点によるいじめ判断の差違に加えて,初めのいじめ判断が後の判断に影響するかどうかが検討された。シナリオは,いじめ場面(エピソード1)と,他の人達からの援助的介入を被害者が拒絶するという場面(エピソード2)を含んでいた。被験者の半数はエピソード1-エピソード2の順に回答し,他の被験者は逆の順序で回答した。その結果,被害者より傍観者は,よりいじめと判断していた。そして,エピソード1における判断は,エピソード2における判断に影響していた。実験3では,集団の数人の成員から被害者が無視されるとき,被害者が仲間はずれにされているという被験者の判断の程度が検討された。実験の要因は,被害者一加害者の立場,被害者への原因帰属,および加害者数に関する判断基準であった。予備調査の結果,3種類の判断基準がみいだされた。それは,(1)数人,(2)半分,および(3)ほとんどの仲間から無視されたときに,被害者が仲間はずれにされたと判断するという基準である。その結果,加害者の方が被害者よりも仲間はずれと判断し,また1番目の基準(数人の加害者)を持つ被験者の方が,より被害者は仲間はずれにされていると判断していた。しかし,どの条件でも,疎外の原因が被害者にあると,その被害者が仲間はずれにされているという判断は低下した。一連の実験を通じて,被害者に対するいじめに関する判断の程度において,被害者条件の方が他の条件よりも低かった。これらの結果は,いじめを否定する被害者の傾向を反映するものと解釈された。なぜなら,いじめの被害者であると認識することが自尊心への脅威となるからである。

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