- 著者
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坂本 毅啓
- 出版者
- 大阪健康福祉短期大学
- 雑誌
- 創発 : 大阪健康福祉短期大学紀要 (ISSN:13481576)
- 巻号頁・発行日
- vol.8, pp.77-92, 2009-03
介護の現場において起きている介護職員の不足と、将来必要とされる介護職員の確保は、現在の介護保障制度において重要な課題となっている。本論では厚生労働省による『「社会福祉事業に委従事する者の確保を図るための措置に関する基本的な指針」の見直しについて』と総務省による『介護保険事業等に関する行政評価・監視<評価・監視結果に基づく勧告>』を基にして、介護職員の不足問題を整理し、現状とその背景を分析した上で、将来必要とされる人材の確保が難しい見通しを示した。それをふまえて、労働経済学を用いて介護職における労働供給曲線と労働需要曲線を導きだし、現在の労働市場の均衡を示した。それにより、介護職員を増やすためには民間企業と同様に賃金の引き上げが必要であることを明らかにした。またそのためには介護事業所における事業収入を増やすことが必要であると指摘した。そして事業収入を増やしつつ、あわせて平等消費型介護保障制度を維持するには、介護報酬を引き上げることが不可避であると明らかにした。それに伴う国民の負担増については、介護保険料の定額制から定率制への移行、収入分の使途を社会保障に限定した消費税率の引き上げによって行うことを提案した。