- 著者
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大貫 啓行
- 出版者
- 麗澤大学
- 雑誌
- 麗沢大学紀要 (ISSN:02874202)
- 巻号頁・発行日
- vol.76, pp.147-165, 2003-07
2002年後半、いよいよ小泉内閣の手掛けた各種改革の具体的検討時期に入った。7月、首相が公務員制度改革の柱として、関係閣僚に早期勧奨退職の慣行是正と退職金の見直し指示をきっかけに、全公務員がにわかに改革に無関心ではいられなくなった。改革内容がしだいに自分たちの身に直接影響が出ることが明らかになるにつれ、官僚の本音もより鮮明に聞かれ出した。日本道路公団など特殊法人改革の目玉としてスポットライトを当てられた所ではお定まりのように情報開示を渋ったり、裏で工作するといった改革に対する各種非協力、いわゆる抵抗の動きも激しさを増した。その他の特殊法人職員からも「自分たちの職場がなくなるのではないか」「少なくとも今までとは違った厳しいものとなるだろう」などといった正直な心配が所々に聞かれた。それにしても公務員の側からの自主的改革の動きがほとんど出て来なかったのはどうしたことだろうか。ひたすら受け身に回っての惨めな印象ばかりがあだって情けない。公務員自身が取り巻く時代環境の変化の中に取り残されてしまった存在(抵抗勢力そのもの)となっているとの観が強まった。本稿では02年後半に展開された公務員の早期退職・天下りなどの待遇に直結した改革論議を中心に、外務省・道路公団改革などの検討過程を通して見られた公務員の潜在意識の変化の状況を考察してみたいと思う。