- 著者
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村上 謙
- 出版者
- 日本語学会
- 雑誌
- 日本語の研究 (ISSN:13495119)
- 巻号頁・発行日
- vol.5, no.1, pp.1-14, 2009-01
現在西日本各地で尊敬語化形式として用いられる「テ+指定辞」は成立当初(18世紀初頭)、継続性表示機能と現在時表示機能を有していた。そうしたテンス・アスペクト機能はその後失われることになるが、本稿では絵入狂言本や浄瑠璃、洒落本、噺本を用いて近世前期から幕末までの用例を収集し、詳細に分析した上で、1780年代頃にはテンス・アスペクト機能が弱化していたことを明らかにする。さらにこうした変化に拍車をかけたのが、「テ+指定辞」と同様の表現性を持つテイナサルの出現であったことを述べる。また明治以降の「テ+指定辞」の動向についても、尊敬語化形式ハルとの関係などを踏まえつつ論じる。