著者
寺戸 淳子
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.83, no.2, pp.551-575, 2009

地縁的・職能的結合関係が解体された革命後のフランスでは、貧困層の出現という形で社会問題が発生した。人権に基づく公的扶助や連帯主義による解決を目指す共和派に対し、カトリック世界では労働組合運動を中心とする男性による社会的カトリシズムと、女性が行う伝統的慈善による対処が試みられた。そのような動きを背景に貧困層の社会統合を目指して始まったルルド巡礼の現場では、徐々に社会的カトリシズムがもつ討議的性格と慈善がもつ党派的性格が弱まり、「他者への配慮」を優先する「傷病者の現れの空間」が確立されていった。本稿では、「正義と権利」を重視する男性的倫理的態度のみを評価する道徳理論に対し、「配慮と責任」を重視する女性的倫理的態度の復権を唱えるギリガンの理論を参照しながら、ルルドの傷病者支援活動を通して生まれた「ディスポニーブル」という「他者に主導権を預けた行動規範」の、意義と可能性を考察する。

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