- 著者
-
菊地 友則
諏訪部 真友子
辻 和希
- 出版者
- 日本土壌動物学会
- 雑誌
- Edaphologia (ISSN:03891445)
- 巻号頁・発行日
- vol.85, pp.59-73, 2009
- 参考文献数
- 54
本稿では琉球列島産アリ4種の生態について概説した.ツヤオオハリアリの巣仲間認識行動は,非巣仲間ワーカーに比べ女王に対してより攻撃的になるカースト依存的な発現パターンを示した.これは,産卵能力に関係した女王とワーカー間の受け入れコストの違いによるものと推測された.また,女王とワーカーの形態比較から,ワーカーは女王に比べ相対的に大きな頭部をもつことが明らかになった.ワーカーの形態は,繁殖に係わる個体選択と生産性などに関係したコロニーレベルの選択のバランスによって影響をうけることから,ワーカーの卵巣が完全に退化しもはや個体選択がかからないッヤオオハリアリでは,コロニーレベルの選択によってワーカーの形態が特殊化したと考えられた.二次的に消失した女王カーストの代わりに,受精したワーカー(ガマゲイト)が産卵者として存在するトゲオオハリアリでは,ガマゲイト存在情報は直接接触によってのみワーカーへと伝達される.このような情報伝達システム下で,伝達効率がコロニーサイズとともにどのように変化するのか明らかにするために,ガマゲイトとワーカーの接触確率とコロニーサイズの関係を調査した.その結果,コロニーサイズが大きくなるほどガマゲイトとワーカーの接触確率が低下することが明らかになった.このことは,接触確率が低下する大きなコロニーでは,ガマゲイトが存在しているにもかかわらず,ワーカーは誤ってガマゲイト不在と認識している可能性を示唆している.琉球列島には,ツヤオオズアリとアシナガキアリの2種の侵略的外来アリが侵入,定着している.この2種の外来アリと在来アリの季節的活動性を調査したところ,外来アリは秋から冬にかけて,逆に在来アリでは春から夏にかけて活動性が高くなる傾向が見られた.この様な活動性の違いが,琉球列島において外来アリが在来アリを駆逐し優占化しない理由の一つと考えられた.