著者
中野 隆文
出版者
日本土壌動物学会
雑誌
Edaphologia (ISSN:03891445)
巻号頁・発行日
vol.100, pp.19-29, 2017 (Released:2018-04-27)

陸棲捕食性ヒル類の分類群であるクガビル属について,その分類形質と分類学史を概説した.更にクガビル属既知 17 種の各種について, 判別形質や命名法に係る項目について紹介すると共に,全 17 種のための検索図を示した.
著者
田中 真悟
出版者
日本土壌動物学会
雑誌
Edaphologia (ISSN:03891445)
巻号頁・発行日
no.86, pp.27-79, 2010-05-28
被引用文献数
2
著者
小林 元樹
出版者
日本土壌動物学会
雑誌
Edaphologia (ISSN:03891445)
巻号頁・発行日
vol.109, pp.9-17, 2021 (Released:2022-07-26)
被引用文献数
1

ここ十年ほどで急速に進展した環形動物の高次系統に関する研究を,陸域の研究者向けに概説した.最近の研究か ら,環形動物門は初期に分岐したいくつかの系統と,遊在類および定在類(貧毛類やヒル類を含む)としてまとめられる系統からなることが分かっている.この系統関係は,既存の高次分類体系と合致せず,分類体系の大幅な見直しが必要であることが示されている.しかし,新しい分類体系はまだ提案されていない.環帯類内部についても,高次の系統関係について理解が進んできているが,分類体系の整理は今後の課題となっている.近い将来,環形動物の系統関係に関する最新の知見に基づいて,包括的な高次分類体系の整理が行われることが期待される.
著者
小林 真 南谷 幸雄 竹内 史郎 奥田 篤志 金子 信博
出版者
日本土壌動物学会
雑誌
Edaphologia (ISSN:03891445)
巻号頁・発行日
vol.97, pp.39-42, 2015 (Released:2017-07-20)

北海道北部の銅蘭川中流部において,初冬期に河川水に大量に出現した陸棲ミミズの種構成を調べた.河川水中で発見された個体の全てがフトミミズ科で表層性のヒトツモンミミズ成体であった.一方,同時期に河畔の森林土壌ではツリミミズ科で地中性のバライロツリミミズが優占していた.これらの結果は,初冬期に道北地域の森林土壌から河川水中に一斉に移動するが,移動をするのは特定のミミズ種に限られる事を示唆する.
著者
金子 信博 井上 浩輔 南谷 幸雄 三浦 季子 角田 智詞 池田 紘士 杉山 修一
出版者
日本土壌動物学会
雑誌
Edaphologia (ISSN:03891445)
巻号頁・発行日
vol.102, pp.31-39, 2018 (Released:2018-04-28)

人間によるさまざまな土地管理は,そこに生息する土壌生物にも大きな影響を与え,土壌生物群集の組成やその機能が,さらにそこに生育する植物の生長にも影響している.農業においても保全管理を行うことで土壌生物の多様性や現存量を高めることが必要である.日本におけるリンゴ栽培は,品種改良と栽培技術の向上により,世界的に高い品質を誇るが,有機栽培は困難であると考えられている.青森県弘前市の木村秋則氏は, 独自の工夫により無施肥, 化学合成農薬不使用による有機栽培を成功させている.その成功の理由については地上部の天敵が増加することや,リンゴ葉内の内生菌による植物の保護力が高まることが考えられているが,土壌生態系の変化については十分調べられていない.そこで,2014 年 9 月に, 木村園(有機) と隣接する慣行リンゴ園, 森林の 3 箇所で土壌理化学性,微生物バイオマス,小型節足動物,および大型土壌動物の調査を行い,比較した.有機の理化学性は,慣行と森林の中間を示したが,カリウム濃度はもっとも低かった.AM 菌根菌のバイオマス, 小型節足動物, 大型土壌動物の個体数は有機で最も多く, 慣行で最も少なかった.特にササラダニの密度は有機が慣行の 10 倍であった.落葉と草本が多く,土壌孔隙が多いことが,有機での土壌生物の多様性および現存量を高めており,植物に必要な栄養塩類の循環と,土壌から地上に供給される生物量を増やすことで,天敵生物の密度を高めることが予測できた.
著者
須摩 靖彦
出版者
日本土壌動物学会
雑誌
Edaphologia (ISSN:03891445)
巻号頁・発行日
no.84, pp.25-56, 2009-03-31
被引用文献数
2
著者
清水 伸泰
出版者
日本土壌動物学会
雑誌
Edaphologia (ISSN:03891445)
巻号頁・発行日
vol.109, pp.1-8, 2021 (Released:2022-07-26)

ヤスデの防御分泌物は古くから化学生態学の研究対象とされ,化学構造に関するデータは蓄積されている.本稿で はそれら多様な防御分泌物が,分類上の目レベルである程度体系付けられることを述べた.新しい話題として,防御 物質の生合成に関わる酵素に産業上,重要な利用法が見出されたり,捕食者に対する化学防衛の手段と考えられたりしていた防御分泌物が,新たなタイプのアレロケミクスとして作用することなどを解説した.その一方で,天然物化 学としてはアルカロイドを中心に新たな防御物質が一部で発見されているものの,ヤスデ全体から見ると防御分泌物 に関する研究は円熟期を迎えている.今後は防御分泌物を介した生物間相互作用に加えて,これまで未解明である種 内における化学的なコミュニケーションに関する研究が進展することを期待する.
著者
金田 哲 南谷 幸雄
出版者
日本土壌動物学会
雑誌
Edaphologia (ISSN:03891445)
巻号頁・発行日
vol.92, pp.25-31, 2013-07-30 (Released:2017-07-20)
参考文献数
25

農地や農地環境において効率的にミミズの調査を行うため,からし採取法のミミズ採取率及び採取時間を調査した.調査地は,火山灰土と非火山灰土の農地およびその周辺環境9地点を選定した.初夏,夏,秋に,それぞれの調査地で,まずからし採取法によりミミズを採取した.その後深さ30cmまで掘り取り,地中に残っているミミズを採取した.からし採取法により,平均で80%以上のミミズを採取できた.土壌型と体積含水率により,からし採取法のミミズ採取率が変化した.火山灰土より非火山灰土でミミズ採取率が低下し,体積含水率が25%以下では,ミミズ採取率が低下した.地表生息性ミミズは100%採取でき,地中生息性は78-98%採取できた.からし採取法では掘り取り法よりも採取時間を短縮でき,0.125m^2の表面積を調査する場合,24.4分時間を短縮できた.ミミズ種によりからし採取法のミミズ採取率が変化するものの,地表温度が15-25℃で湿潤な土壌条件であれば,からし採取法により低労力かつ短時間でミミズの採取が可能になると考えられた.本研究から土壌型を区別することで日本の農地環境において,からし採取法を用いた効率的なミミズ群集調査が十分適用できる事が明らかとなった.
著者
須摩 靖彦
出版者
日本土壌動物学会
雑誌
Edaphologia (ISSN:03891445)
巻号頁・発行日
vol.84, pp.25-56, 2009-03-31 (Released:2017-07-20)
参考文献数
27
被引用文献数
1

トゲトビムシ科の形態的な特徴と,分類指標になる上唇毛式,転節器官,茎節棘式と端節を中心に特徴を述べた.日本産トゲトビムシ科は5属3亜属29種2亜種を数える.これらを検索図,識別形質表,そして属・種の各論に分けて解説した.
著者
伊藤 良作 長谷川 真紀子 一澤 圭 古野 勝久 須摩 靖彦 田中 真悟 長谷川 元洋 新島 溪子
出版者
日本土壌動物学会
雑誌
Edaphologia (ISSN:03891445)
巻号頁・発行日
vol.91, pp.99-156, 2012-12-28 (Released:2017-07-20)
参考文献数
86

日本産ミジントビムシ亜目1科2属2種およびマルトビムシ亜目6科(2亜科を含む)19属63種1亜種について,同定に必要な形質について説明するとともに,検索図と形質識別表を示し,種類別の特徴を解説した.識別のための主な形質は体の色と模様,体形,特殊な体毛,小眼の数,触角の長さと各節の比率,触角第3,4節の分節数,雄の触角把握器,触角後毛の有無,雄の顔面毛,脛〓節の先の広がった粘毛の方向と,各肢の粘毛の数,脛〓節器官の有無とその形態,爪(外被,偽外被,側歯,内歯の有無)や保体(歯や毛の数)の形態,跳躍器茎節の毛の形質,端節の形態,雌の肛門節付属器,胴感毛の数と配置などである.
著者
一澤 圭
出版者
日本土壌動物学会
雑誌
Edaphologia (ISSN:03891445)
巻号頁・発行日
vol.91, pp.31-97, 2012-12-28 (Released:2017-07-20)
参考文献数
115
被引用文献数
1

アヤトビムシ科9属46種.ニシキトビムシ科3属3種,オウギトビムシ科3属7種,アリノストビムシ科2属2種,キヌトビムシ科2属5種について,科ごとの検索図および形質識別表を示し,各属・種の特徴を解説した.識別の指標となるおもな形質は,カラーパターン,ウロコの有無や分布,小眼数,口器・爪・跳躍器の形状,剛毛配列である.
著者
上平 幸好
出版者
日本土壌動物学会
雑誌
Edaphologia (ISSN:03891445)
巻号頁・発行日
vol.99, pp.1-9, 2016 (Released:2018-04-27)

九州本島をほぼ網羅する255 地点で, 日本固有種である Metaphire sieboldi( シーボルトミミズ)の分布調査を行い,31 地点でその生息を確認した. 九州北東部と南部で出現頻度は低く,東部で高いことが判明した.出現頻度の違いから本種の分布は偏在しているように推察されたので,著者の結果に他の研究者による本種の出現報告と情報提供の結果を加え再度検討したが,分布状況に大きな違いは認められなかった.この偏在する分布の原因を解明するため土壌型との関連を調べた.地史的に古い土壌である黄褐色森林土と赤黄色土での本種の出現頻度は高く,新しい灰色低地土では低かった.この灰色低地土は河海成の若い土壌であるが,森林土への遷移が進みつつある地域では,隣接する土壌域から本種が進出しつつある例を観察した.阿蘇-4 大噴火を起因とする広い溶岩台地を覆う黒ボク土に本種は出現せず,また,姶良カルデラの生成に起因するシラス台地でも,その出現はごく稀であった.それぞれの台地を覆っている新しい火山灰性土壌は,その特徴的な性状で本種の台地への進出を妨げ分布の障壁になっていた.出現地点と植生図との照合により,最終氷河期以後の九州本島における本種の生息地は照葉樹林帯であると結論したが,2 万年前の最終氷期に,九州本島全域は冷温帯夏緑樹林に覆われていたとする研究報告を考慮すると,本種は照葉樹林内でなければ生息できないとはいえないことを,本州における観察例をあげて指摘した.
著者
谷地 俊二 大高 明史 金子 信博
出版者
日本土壌動物学会
雑誌
Edaphologia (ISSN:03891445)
巻号頁・発行日
vol.90, pp.13-24, 2012
参考文献数
45

神奈川県鎌倉市にある冬期湛水型の有機農法水田における水生ミミズ類の種組成,個体数密度,バイオマスを,冬季を除いた2010年6月から2011年5月まで調べた.水生ミミズ類の種構成は8種類からなり,他の水田や富栄養湖に優占するL.hoffmeiteriとB.sowerbyiが優占していた.鎌倉水田における水生ミミズ類の個体数密度は2,822m^<-2>であり,似た種構成を記録した北日本(50,000m^<-2>)やフィリピン(8,200m^<-2>)の水田と比べ低かった.また,渓流性のE.yamaguchiiが生息していた.
著者
中森 泰三 藤原 直哉 松本 直幸 岡田 浩明
出版者
日本土壌動物学会
雑誌
Edaphologia (ISSN:03891445)
巻号頁・発行日
no.84, pp.5-9, 2009-03-31

持続可能な農業に向けて農業生態系の生物多様性に関心が高まっている.日本では農業生態系におけるトビムシの多様性に関する知見は限られている.そこで,我々は慣行および保全型畑地に加えて森林土壌およびリター堆肥におけるトビムシの種組成を明らかにした.総個体数および種数ともに慣行畑地より保全型畑地において多かった.また,畑地土壌からMesaphorura silvicola(Folsom)が日本から初めて得られたので合わせて報告する.
著者
陰山 大輔
出版者
日本土壌動物学会
雑誌
Edaphologia (ISSN:03891445)
巻号頁・発行日
vol.95, pp.7-14, 2014-11-14 (Released:2017-07-20)

地球上のほとんどの微生物は,栄養要求が複雑なため培養が困難だったり培養がほとんど不可能だったりする.分子生物学的技術の進歩により,人工培養せずに微生物の同定が可能になったことから,地球上に生息する微生物の多様性を明らかにするという,以前は不可能であった問題にも取り組めるようになってきた.このようなことから,多様な共生微生物を体内に住まわせている無脊椎動物にも興味が注がれている.ワラジムシ類は元々海洋に起源を持つが,多くの種(特にワラジムシ亜目)は陸上での生活に適応している.ほとんどの種が陸上で生活をする昆虫類に比べて,ワラジムシ類における共生微生物の研究はあまり十分にはなされていない.本稿では,ワラジムシの共生微生物について現在知られていることを紹介した.陸上への進出に共生微生物が関わったとする興味深い仮説もあり,今後の研究が期待される.
著者
新島 溪子
出版者
日本土壌動物学会
雑誌
Edaphologia (ISSN:03891445)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.43-46, 2001-08-31 (Released:2017-07-20)
参考文献数
26
被引用文献数
1

The outbreak of Oxidus gracilis (Diplopoda: Polydesmida) happened near Hiraiwa Station, Oito Line, Niigata Prefecture and stopped the special express train `Resort Hakuba Alps' for 2.5 hours on 29 July 2000. The millipedes were swept down from the rail and killed by insecticide. A park was constructed on both sides of the outbreak section three years before. Lawn and redclover with organic fertilizer of the park seemed to provide favorite habitat for the millipede.