著者
福田 栄紀 須山 哲男 澁谷 幸憲 八木 隆徳 目黒 良平
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.132-140, 2009-07-15

放牧牛がチシマザサ(以下、ササとする)優占植生中のスギ稚樹の生残に及ぼす影響を調べた。放牧共用林野内のスギ人工林に隣接するブナ林の空隙地に、禁牧区と放牧区を設定し、両区で放牧牛がササの生育、およびスギ稚樹の光環境、生残と樹高伸長に及ぼす影響を5年間比較した。禁牧区では、ササの被度と高さは急増して相対光量子束密度は低下し、スギ稚樹の生存率は禁牧3年目で急減した。一方、放牧区では、ササは採食されて生育が抑制されたため、良好な光環境が維持され、スギ稚樹の生存率と樹高伸長量は相対的に高く保たれた。放牧牛によるスギ稚樹の採食は稀で、踏圧や排糞による影響も軽微であった。放牧牛はササに対しては撹乱要因として作用したが、スギ稚樹に対しては作用しなかったため、ササに対する選択的生物撹乱要因と言える。スギの更新の成否は、ササが同所的に分布するブナ林床では、放牧牛の採食圧に強く依存する。

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