著者
矢野 潤 上地 理恵 雨坪 知音 義平 邦利
出版者
日本食品化学学会
雑誌
日本食品化学学会誌 (ISSN:13412094)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.155-160, 2002-01-24

これまで測定例がほとんど報告されていないキサンテン系の食用赤色色素(食用赤色3号、食用赤色104号、食用赤色105号、食用赤色106号)のサイクリックボルタンモグラムを測定したところ、すべてのサイクリックボルタンモグラムにおいて、明らかに食用色素のものと考えられる酸化電流ピークが観測された。酸化電流ピーク電位は、食用赤色3号が+0.725V、食用赤色104号が+0.810V、食用赤色105号が+0.801V、食用赤色106号が+1.010Vであった。したがって、もしこれらが還元作用を有するならば、その還元能力は食用赤色3号>食用赤色105号>食用赤色104号>食用赤色106号の順で高いことが予想された。他方、還元電流ピークは還元側の電位を-0.5Vまで走査しても、ほとんど観測されなかった。このことはこれらの食用色素から酸化されて精製したカチオンラジカルあるいはジカチオンが不安定で、水あるいは色素自身と反応し、レドックス不活性種と変化したために、もはや還元電位に保持されてももとの色素には戻れなくなったためと考えられた。またそれぞれの酸化電流ピーク電位の差異は芳香環置換されている官能基の電子誘起効果のためと示唆された。食用赤色3号、食用赤色104号、食用赤色105号、食用赤色106号をそれぞれ+1.1Vの定電位で酸化したところ、電解酸化によって色素の濃度は減少したが、所定の電解時間および電解終了時に測定したサイクリックボルタンモグラムには色素の酸化電流以外には他のレドックス電流は観測されなかったため、その電解酸化生成物はレドックス活性な化合物ではなかった。電解前後の電解溶液の可視光吸収スペクトルを測定した結果、両者においてあまり変化は見られなかったが、電解終了時の電極表面上には赤色の固体生成物が認められた。まだそれらの分子構造は決定できていないが、おそらく色素が多量化したものと推察された。抗酸化性については、典型的な抗酸化剤であるBHAよりは低いが、酸素の還元電位より酸化電位が低い食用赤色3号、食用赤色104号、食用赤色105号は抗酸化剤として機能することが予想された。

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