著者
矢野 潤
出版者
山口大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

導電性高分子であるアニリン誘導体高分子,ポリ(N-メチルアニリン)(PNMA)およびポリ(o-フェニレンジアミン)(PoPD),をそれぞれ対応するモノマーを電解重合することにより作製した.PNMAおよびPoPDとも安定な膜として電極基板上に得られた.これらの重合膜を被覆した電極を用いて溶存する有機化合物のサイクリックボルタンモグラムを測定したところ,ビタミンCやいくつかのキノン類のサイクリックボルタンモグラムの酸化・還元ピーク電位は電極反応が起こりやすい方向に移行し,重合膜の電極触媒作用が観測された.PNMA膜の電極触媒作用の電極過程や速度論的パラメタを調べるため,PNMA膜を回転円板電極(RDE)上に被覆してRDEボルタンメトリを行った.PNMA膜の膜厚,溶存種の濃度などを変えてRDEボルタンモグラムを測定し,AlberyとHillmanの理論をもとに解析した.その結果,(1)溶存する有機化合物は主にPNMA膜中のレドックス活性サイトにより酸化・還元されること,(2)その電荷移動の速度定数は6.4×10^3Ms^<-1>であったこと,(3)電極触媒反応の全電極反応速度定数は0.015cm s^<-1>であったこと,などが明かとなった.他方,PoPD膜についても同等の検討を行った結果,(1)〜(3)とほぼ同様の結果が得られた.したがってこうした電極触媒作用を高めるには,重合膜のレドックス活性の増加を図ることが重要であるという知見が得られた.PoPDは他の多くの導電性分子と異なり,いくつかの有機溶媒に溶解した.そこでこのことを利用してPoPDの分子構造が決定できた.得られた分子構造と導電性や電極触媒活性の関連についても有為な結果が得られた.
著者
矢野 潤 上地 理恵 雨坪 知音 義平 邦利
出版者
日本食品化学学会
雑誌
日本食品化学学会誌 (ISSN:13412094)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.155-160, 2002-01-24

これまで測定例がほとんど報告されていないキサンテン系の食用赤色色素(食用赤色3号、食用赤色104号、食用赤色105号、食用赤色106号)のサイクリックボルタンモグラムを測定したところ、すべてのサイクリックボルタンモグラムにおいて、明らかに食用色素のものと考えられる酸化電流ピークが観測された。酸化電流ピーク電位は、食用赤色3号が+0.725V、食用赤色104号が+0.810V、食用赤色105号が+0.801V、食用赤色106号が+1.010Vであった。したがって、もしこれらが還元作用を有するならば、その還元能力は食用赤色3号>食用赤色105号>食用赤色104号>食用赤色106号の順で高いことが予想された。他方、還元電流ピークは還元側の電位を-0.5Vまで走査しても、ほとんど観測されなかった。このことはこれらの食用色素から酸化されて精製したカチオンラジカルあるいはジカチオンが不安定で、水あるいは色素自身と反応し、レドックス不活性種と変化したために、もはや還元電位に保持されてももとの色素には戻れなくなったためと考えられた。またそれぞれの酸化電流ピーク電位の差異は芳香環置換されている官能基の電子誘起効果のためと示唆された。食用赤色3号、食用赤色104号、食用赤色105号、食用赤色106号をそれぞれ+1.1Vの定電位で酸化したところ、電解酸化によって色素の濃度は減少したが、所定の電解時間および電解終了時に測定したサイクリックボルタンモグラムには色素の酸化電流以外には他のレドックス電流は観測されなかったため、その電解酸化生成物はレドックス活性な化合物ではなかった。電解前後の電解溶液の可視光吸収スペクトルを測定した結果、両者においてあまり変化は見られなかったが、電解終了時の電極表面上には赤色の固体生成物が認められた。まだそれらの分子構造は決定できていないが、おそらく色素が多量化したものと推察された。抗酸化性については、典型的な抗酸化剤であるBHAよりは低いが、酸素の還元電位より酸化電位が低い食用赤色3号、食用赤色104号、食用赤色105号は抗酸化剤として機能することが予想された。
著者
山川 肇 矢野 潤也
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物学会論文誌 (ISSN:18831648)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.212-224, 2008 (Released:2009-03-10)
参考文献数
24

本研究では,ごみ処理事業の費用負担のあり方に関する研究の基礎として,戦後の有料化の変遷を明らかにした。戦後から現在までに実施されたごみ収集手数料に関する調査・資料をサーベイした結果,1) 家庭ごみ有料化都市は,戦後10年間でほぼ皆無の状態から約50%まで大きく増加し,その後1960年代後半から10年間で約10%まで大きく減少した。さらに1990年以降約15年間で再び約40%まで増加した。2) 事業系ごみを含むごみ処理事業の日本全体の手数料負担率は,無料化の進展にともない10%強から5%弱に減少した。3) 無料化進展以前の1957年における定額制の手数料水準は173円/月・世帯であった (物価調整済み)。これは2000年の従量制有料化都市における家計負担試算額の2分の1程度となった。
著者
矢野 潤 塩原 正雄 平木 弘一 竹田 正
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.308-312, 2005-12-10 (Released:2017-06-30)
参考文献数
6
被引用文献数
2

Both a ringed copper plate electrode and a carbon rod electrode were arranged in a Petri dish filled with the electrolyte solutions : 0.2M H_2SO_4, 0.2M Fe^<3+>+0.2M Fe^<2+>+0.2M H_2SO_4 and 0.2M Fe(CN)_6^<3->+0.2M Fe(CN)_6^<4->+0.2M H_2SO_4 aqueous solutions (1M=1 mol dm^<-3>). The Petri dish was placed on a permanent magnet. The geometrical arrangement is shown in Fig. 1. The vortex motion of the electrolyte solutions originated from the Lorentz's force was clearly observed as soon as the constant-current electrolysis was started. The magnitude of the vortex motion was estimated by the rotation rate (R) defined as the equation (2). The larger the electrolytic current was, the higher the rate became. The rate was in the order of Fe(CN)_6^<3->/Fe(CN)_6^<4->>Fe^<3+>/Fe^<2+>>H_2SO_4 systems and the order was probably due to the valence of the ionic species. In addition, the equation of motion was analyzed for the Fe^<2+> ion using a simplified model. The experiment was demonstrated in front of college students as estimators.
著者
矢野 潤
出版者
東亜大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

(1)ポリ(o-フェニレンジアミン)のハロゲン化物イオンに対する会合定数の決定ポリアニリン類自身のハロゲン化物イオンに対する会合定数について検討するために,通常の有機溶媒に可溶なアニリン誘導体高分子を検索した.その結果,ドープ状態で可溶な導電性高分子ポリ(o-フェニレンジアミン)(PoPD)を見い出した.この結果はJ. Polymer.Sci. に公表した.このPoPDを用い,その溶存状態においてサイクリックボルタンモグラムを諸条件下で測定した.得られたブルタンモグラムのレドックス電位のハロゲン化物イオン濃度依存を解析することにより.PoPDの各ハロゲン化物イオンに対する会合定数を決定することができた.会合定数のデータが導電性高分子で得られたことは初めてであり,この成果はJ. Electroanal. Chem. に公表予定である.またこの結果を基にECDや固体電解質への応用を行ったところ有益な結果も得られた.これらはJ. Mater. Sci. Lett. に公表,J. Mater. Sci. に公表予定である.(2)電位応答型のハロゲン化物イオンセンサの作製カチオンサイトを有するアニリン誘導体高分子,ポリ(N, N-ジメチルアニリン)(PDA),にヨウ化物イオンを固定化させ,さらに電解酸化した膜は溶存するヨウ化物イオンとのNernst応答により,電位応答型のヨウ化物イオンセンサとして機能した.さらにそのPDA上にヨウ化物イオンの選択的膜透過機能をもつポリ(o-クロルアニリン)膜を被覆すると選択係数が向上した.この成果は,イオン電極研究に発表した.