著者
藤田 稔
出版者
山形大学
雑誌
山形大学法政論叢
巻号頁・発行日
vol.18, pp.51-97, 2000-05-25

はじめに 日本における拘束条件付取引に対する独占禁止法の通用の検討は、製造業者と販売業者との売買契約の関係を中心に進められてきた。しかしながら、製造業者と販売業者との間で結ばれる代理店契約には、販売委託契約や代理商契約も利用されている。本稿は、委託販売における委託者による受託販売業者に対する価格拘束の問題を中心に、独占禁止法の不公正な取引方法の規定を適用する際の違法性判断基準の分析枠組みについて論じるものである。これらの問題については、従来、公取委の行った審決や独占禁止法研究会報告、流通・取引慣行指針をめぐって検討が行われてきたが、必ずしも十分ではないように思われる。現在、著作物の再販売価格維持の適用除外規定の改廃に関する検討が公取委によって行われているが、適用除外規定が廃止された場合には、価格維持が委託販売や締約代理商の取引形態によって試みられる可能性もあり、委託販売や締約代理商への独禁法適用をどのように進めるかが問題となるのではないかと思われる。筆者は、既に委託販売における価格拘束の違法性判断基準に関して論考を公表しているが、十分に論じられなかったので、改めて論じるものであり、善管注意義務や問屋の指値遵守義務との関係、独禁法の排除措置との関係についても論じていく。その上で、書籍と新聞の流通に関する独禁法適用の問題も論じる。なお本稿では、再販売価格維持等の拘束条件付取引の公正競争阻害性については、立ち入った検討は行わず、基本的に通説的立場を前提にして論じており、契約形態の差異に由来する独禁法適用の問題を主題としている。

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