著者
田村 哲樹
出版者
山形大学法学会
雑誌
山形大学法政論叢
巻号頁・発行日
vol.76/77, pp.187-223, 2023-03-31
著者
今野 健一 高橋 早苗
出版者
山形大学
雑誌
山形大学法政論叢
巻号頁・発行日
vol.36, pp.57-77, 2006-03-31

はじめに 2005年10月未から11月半ばにかけて、パリの郊外を中心にフランス全土で、大規模な「暴動」(emeutes)が起こった。4人の死者と多数の負傷者、およそ1万台の自家用車への放火、その他膨大な物的損害をもたらし、外国メディアからは<内戦>とまで(かなり大げさに)表現された。ただ、この現象の社会的意味を見定めることは、実はそれほど容易なことではない。暴動の発火点となった大都市「郊外」(banlieues)のフランス的特質や、郊外の大規模公営団地(シテ〔cite〕)に住まう移民出身の住民たちの来歴と生活の現状、(平時)でも1日に90台以上もの車が放火されるという「都市暴力」(violencesurbaines)と今回のような「暴動」の原因と特質、さらに、「郊外」の(社会的困難を抱えた地区)(quartierssensibles)でしばしば若者と衝突する治安部隊(警察・憲兵隊)の運用を中心とするセキュリティの法政策の特質などを考察の姐上に載せる必要がある。問題は多岐にわたり、それぞれが深刻である。本稿では、今回の「暴動」の発生の経緯と事態の推移をフランスの新聞等の報道から再構成した上で、「暴動」に潜む問題事象の幾つかの側面(郊外における若者の都市暴力と移民問題、政府による犯罪予防・治安対策の変遷と特質)につき、限定的ではあるが検討を加え、現時点における我々なりの問題状況の図式化を試みたい。
著者
山内 進
出版者
山形大学法学会
雑誌
山形大学法政論叢
巻号頁・発行日
no.54, pp.95-127, 2012
著者
今野 健一 高橋 早苗
出版者
山形大学法学会
雑誌
山形大学法政論叢
巻号頁・発行日
no.28, pp.88-69, 2003

はじめに 人々は、様々な不安や悩みを抱えながら、日々を暮らしている。病気や事故、失業、貧困、災害、犯罪などに見舞われるという事態は、程度の差はあるにせよ、誰にでも起こりうることである。そうした諸々の脅威から完全に解放されることが不可能であるならば、如何にしてそのリスクを回避しまたは小さくしていくのかが、問われなければならない。20世紀の社会国家・福祉国家は、人間の尊厳に値する生存を人々に「権利」として保障し、その役割を果たすべく各種の法制度を細密に整備してきた。それが、多様なリスクに囲まれた市民個々の生存への配慮を礼会的に行うシステムとしての「社会保障」(SocialSecurity)である。しかし、1990年代から顕著になった経済のグローバル化(globalization)と、それに寄り添う新自由主義が世界を席捲するなかで、日本においても、福祉国家のシステムとその理念は危殆に瀕している。その反作用として、社会的な保護を削り取られた人々は、失業や貧困、病気などの脅威に否応なしに直面させられる。また、グローバル化と新自由主義的政策の展開は、家族や職場、地域など既存の社会的ネットワークを解体しつつある。こうして、社会的・経済的格差の増大と、人々を保護してきた社会的紐帯の弱体化は、人々の間でますます大きな不安感を生み出している。特に見逃せないのは、社会的逸脱としての犯罪事象の増加という現象であり、日本の「安全神話」のゆらぎは、今や何人の目にも明らかになってきている。我々は前稿で、犯罪のリスクが個人のセキュリティ(またはインセキュリティの感情)に如何なる影響を与えているか、個人のセキュリティ確保のために欧米資本主義諸国で如何なる対応が採られているのかを簡略に俯瞰し、その時点での我々なりの見取り図を示した。我々の研究は、日本における犯罪のリスクに対する市民意識の変化のありように着目し、今後さらに予想される個人のセキュリティ要求の高まりを睨んで、現代の日本社会に相応しい個人のセキュリティ確保のありようを見定めることを、最終の目標としている。その目標に至る道筋として、既に個人のセキュリティの問題が社会的に広く認知され、政治的にも重要な争点を形成するに至っている欧米諸国の動向を把握する作業が不可欠となる。本論文では、前稿で示した見取り図を背景としつつ、対照的な法・政治的伝統を有するイギリスとフランスを具体の考察の対象とする。検討の手順は次のとおりである。まず、犯罪率と犯罪恐怖がセキュリティに対する政治と市民の対応に如何なる影響を及ぼすものであるかを明らかにする。次に、警察などの公的部門によるセキュリティ供給の動向を概観し比較を試みる。第3に、イギリスを素材に、非国家的なセキュリティ供給の態様・特徴・問題点を検討する。その上で、昂進するセキュリティの商品化が挙む問題点を明らかにする。
著者
金澤 真理
出版者
山形大学
雑誌
山形大学法政論叢
巻号頁・発行日
vol.37, pp.1-26, 2007-01-31

はじめに 日本の更生保護制度は、官民協働に特徴づけられる。従来「保護会」と呼ばれてきた更生保護施設は、一八八八(明治二一)年に治山、治水事業家でもあった金原明善らが設立した「静岡県出獄人保護会社」を嚆矢とし、以後一〇〇年以上にわたって民間の篤志家、宗教関係者、退職公務員が中心となり、刑務所を出所した者や仮釈放者となった者に食事や宿泊所を提供してきた。また、政府もこれを奨励した。保護会は、戦前、戦後を通じて刑罰を受けた者の社会復帰に重要な役割を果たしてきたが、経営上の困難、施設の老朽化さらには地域住民からの排斥運動等に遭い、その運営に困難を来す場合も少なくなかった。そこで、一九九五年、更生保護事業法の制定により、更生保護法人制度が創設され、「更生保護施設」として、従来の公益法人としての扱いに比べて税制上の優遇措置を受けられるようになり、他の社会福祉法人と並んで、より公益性の高い法人と位置づけられることとなった。この間、更生保護事業が一貫して主として民間の手によって運営されていたことは特筆に値する。現在、更生保護施設を利用する者の大半が保護観察対象者であり、また、刑務所から仮釈放となった者についても約三人に一人が社会復帰の足がかりとして更生保護施設を利用しており、保護観察や仮釈放の実施上、更生保護施設は必要不可欠の存在となっている。就中、近時、矯正施設の過剰収容が問題となっていることから窺知されるように、施設から出所後、更生保護施設における保護を要する者もまた増加傾向にある。本稿は、更生保護事業における更生保護施設の重要性に鑑み、その運営のあり方につき少しく考察を加えるものである。
著者
北川 忠明
出版者
山形大学
雑誌
山形大学法政論叢
巻号頁・発行日
vol.43, pp.92-35, 2008-10-10
著者
藤田 稔
出版者
山形大学
雑誌
山形大学法政論叢
巻号頁・発行日
vol.18, pp.51-97, 2000-05-25

はじめに 日本における拘束条件付取引に対する独占禁止法の通用の検討は、製造業者と販売業者との売買契約の関係を中心に進められてきた。しかしながら、製造業者と販売業者との間で結ばれる代理店契約には、販売委託契約や代理商契約も利用されている。本稿は、委託販売における委託者による受託販売業者に対する価格拘束の問題を中心に、独占禁止法の不公正な取引方法の規定を適用する際の違法性判断基準の分析枠組みについて論じるものである。これらの問題については、従来、公取委の行った審決や独占禁止法研究会報告、流通・取引慣行指針をめぐって検討が行われてきたが、必ずしも十分ではないように思われる。現在、著作物の再販売価格維持の適用除外規定の改廃に関する検討が公取委によって行われているが、適用除外規定が廃止された場合には、価格維持が委託販売や締約代理商の取引形態によって試みられる可能性もあり、委託販売や締約代理商への独禁法適用をどのように進めるかが問題となるのではないかと思われる。筆者は、既に委託販売における価格拘束の違法性判断基準に関して論考を公表しているが、十分に論じられなかったので、改めて論じるものであり、善管注意義務や問屋の指値遵守義務との関係、独禁法の排除措置との関係についても論じていく。その上で、書籍と新聞の流通に関する独禁法適用の問題も論じる。なお本稿では、再販売価格維持等の拘束条件付取引の公正競争阻害性については、立ち入った検討は行わず、基本的に通説的立場を前提にして論じており、契約形態の差異に由来する独禁法適用の問題を主題としている。