著者
岡本 良知
出版者
慶應義塾大学
雑誌
史学 (ISSN:03869334)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.539-598, 1936-03

日本とフィリッピン群島との交通及び貿易を便宜上二期に分つて觀察しやう。前期は一五六五年エスパニヤ人の群島占據の始めより一五九〇年に至る二十五年間であり、後期はそれ以後の三十年間である。この二期の第一特徴は、前期に於ては全くその航海と通商を日本人が狗占し、後期に於ては彼我兩方面より船が往來し貿易に從つたことであり、第二には、前期に於ては外交上宗教上直接の関係が殆んど生やす、後期に於てはこれに反して事變續出して兩國の交渉が複雑錯綜したことである。本稿の目的とするところはこの前期に於ける兩國の交渉と通商とである。我等は先づ彼我兩國船の交通を研究し、然る後貿易上の現象を論じやう。

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