- 著者
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東畠 弘子
- 出版者
- 国際医療福祉大学
- 雑誌
- 国際医療福祉大学紀要 (ISSN:13424661)
- 巻号頁・発行日
- vol.14, no.2, pp.29-40, 2009
本研究は在宅の認知症高齢者の福祉用具利用時の事故・ひやりはっとの実態を知るためにアンケート調査を行い,その防止策について検討を行ったものである。全国福祉用具専門相談員協会会員全員を対象に行った結果から,事故・ひやりはっと134 件のうち最も多いのはベッド・付属品で,なかでも柵が43 件(32.1%)と多く,「柵を乗り越えて転落」(19 件14.2%),「柵の挟み込み」(18 件13.4%)が顕著であることが明らかになった。認知症高齢者に限定した福祉用具の事故・ひやりはっと調査自体,筆者が調べた範囲ではこれまで例がなく,「柵を乗り越えて転落」に見られるように,認知症高齢者にとっては転落防止のための柵が行動の障害となり,事故につながる可能性があると考えられる。ベッド柵で囲むなど家族からの福祉用具による身体拘束の依頼も多く,認知症高齢者のリスクマネジメントとして,福祉用具専門相談員はベッド柵の使用について慎重に考える必要があると思われる。国とメーカーは「柵を乗り越える」ことに対する注意喚起をする必要がある。