著者
平井 廣一
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.91-108, 2010-03-11

満鉄は, 1906年の設立時に出された逓信・大蔵・外務の三大臣命令書によって, 鉄道や港湾, 炭鉱事業を経営するための事業用地や駅周辺の市街地を鉄道附属地として位置づけ, 土木(道路・上下水道等), 衛生(病院), 教育事業(初等・中等教育), さらには不動産事業を行なうことになった。 満鉄は, これらの附属地経営(地方経営ともよばれた)にかかわるインフラ整備に多額の投資を行ない, その総資産額は, 1937年に附属地が満鉄の手を離れて満州国に移管される際には, 本業の鉄道や炭鉱などを含んだ総額の20%を超えていた。 こうした巨額の投資に支えられた満鉄の附属地経営は, 事業としては当然のごとく赤字を生み出さざるを得ず, 唯一の黒字経営であった不動産事業も, 附属地経営全体の赤字を補填できるものではなかった。その赤字を埋め合わせ, しかも満鉄全体の収支を黒字化したのが鉄道事業だったのである。

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