- 著者
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岩崎 宗治
- 出版者
- 人間環境大学
- 雑誌
- こころとことば (ISSN:13472895)
- 巻号頁・発行日
- vol.9, pp.31-42, 2010-03-31
トマス・ワイアットは、ヘンリー八世に仕える詩人として、ペトラルカ恋愛詩の翻訳から出発した。彼は、権力構造の生む残酷な不条理を目撃し、宮廷の女たちの虚飾、不実を体験的に知り、そうした現実認識を、運命の冷酷さ、ペトラルカ的聖女とは対極の不実な女性像として、彼の恋愛詩に表現した。彼はまた、外交使節として説得、欺瞞、韜晦の語法を身につけ、宮廷社交界における求愛の言語を学び、その繊細な言語感覚により、イタリア・ソネットの形式と英語の自然な音調を融合させ、英語ソネットの原型を確立した。ワイアットの内省的な詩には、人間性の洗練と理性的な両性関係を指向するプロテスタント・ヒューマニズムの倫理性が見られる。